まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

オカルトリック

オカルトリック (このライトノベルがすごい! 文庫)

オカルトリック (このライトノベルがすごい! 文庫)

ストーリー
引きこもりの美女探偵“ねえさん”の助手として働く元狐憑きの少年・玉藻。
ある日飛び込んできた依頼は、女子寮で下着が次々に燃やされている事件を解決してくれというものだった。
ねえさんによって女子高生に変装させられた玉藻は、男子禁制の女子寮で捜査を始めるのだが……。



でろっでろでした。ぐっちゃぐちゃでした。
生と死とエロスとオカルトが交じり合って、そこに作者特有の、狂ったような、それでいてなぜかテンポの良い文章が味付けを加えて、他ではなかなかお目にかかれないタイプの魅力を醸しだしている。
推理の内容に多少疑問を感じたりとか、流れがいまいち理解できなかったりとかといった部分もありましたけれども、そんなことより、ただひたすら圧倒されていたような気がします。
他者を傷つけ、燃やし、殺し、真っ赤で真っ黒なストーリーのはずなのに、思い浮かぶイメージカラーはショッキングピンク。
なぜなんでしょうか。いかれたキャラクターたちがみな楽しげだからでしょうか。ハッピーを追い求めているからなんでしょうか。
だんだん自分でも何を言ってるんだか分からなくなってきました。錯乱している。ページの間に怪しげな物質でも仕込んでるんじゃないでしょうね。


まず目を引くのは、引きこもりのくせに偉そうで、扇情的で蠱惑的で、何を考えているのかさっぱり分からないオカルト探偵・ねえさん。
身の回りの世話を焼く玉藻にべったりひっついて、毒々しい愛をひたすらにまき散らしております。
この人、もし玉藻がいなくなったら3日で土に還ってしまうんじゃないか。そんな風にさえ思えてきます。
しかしながら、依存というのもまたひとつの、真実の愛の形ではないでしょうか。ここまで真っ正直に、それを体現しなくてもいいんじゃないのとは思いますけれども。愛が重い。
そして、その愛をただひとりで受け止め切っているのが主人公の玉藻。
特殊な事情があるとはいえ、このねえさんと共に、平然と同じ屋根の下で生活できているという時点で既に普通ではありませんが、話を読み進めるうちにどんどん、その「普通ではない」が大きくなっていきます。
もう、このふたりの間だけで完結しておけば、それが誰にとっても一番幸福なんじゃないでしょうか。だめですか。そうですか。
イソラたんと出会ってしまったので、どっちみちもう遅いのかもしれませんが。


オカルトをネタに、愛に満ちた日常と、ちょっとした謎解きと、血なまぐさい戦いと、プラスアルファ。
シュールなギャグには笑わせられたし、事件の顛末には存外にドキドキしたし、見ようによってはちょっといい話に、見えなくも、ないような、気が、するしで、色々な楽しみのある作品だったと思います。
あと、あとがきがひどすぎる。いやイソラたんは確かに可愛いですけども。
購入者限定で、公式サイトの特別短編が読めるということですので、そちらも早いうちに読んでしまいたいですね。
全く先が読めないけれど、次の巻も楽しみにしています。


イラストは葛西心さん。本文の雰囲気を見事に再現、増幅させてくれる、迫力のあるイラストでした。
表紙のねえさんの太ももの文字に絶妙なフェティシズムを感じる。


最後のイラストは卑怯だろ! 夢に出てくるわ! ぞっくぞくしますね!