まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

東京レイヴンズ7 _DARKNESS_EMERGE_

ストーリー
『D』による襲撃事件で被害を受けたため、陰陽塾塾舎ビルは一時閉鎖され、修復されることに。
その間の春虎たちの講義は、祓魔局目黒支局の建物を間借りして行なわれていた。
大友と『D』の呪術戦を見て以来、しばしば考え事にのめり込み、気もそぞろな毎日を過ごす春虎だが……。



面白かったあああああ! 前巻で非常に熱いバトルを見せてくれたので、今回はどちらかというと抑えめでいくのだろうと思っていたのに、全然そんなことはありませんでした。
前巻の主人公が大友陣であったなら、今巻の主人公は紛れもなく土御門春虎その人でしたね。
強い大人が助けてくれるからとあぐらをかくのではなく、強い大人の姿に学び、自ら守れるように強くなる。そう、主人公というものは、ヒーローというものは、こうでないといけないのです。
そう考えると、主人公というのはまったく、疲れる役どころですが、やっぱりヒーローには一番格好良くあってほしいですからね! 春虎には、まだまだ頑張っていただきたいところ。


今回何より印象深かったのは、春虎の成長です。序盤の模擬戦の時点で、今までとはまるでレベルの違うバトルを見せ、プロの祓魔官と見事に渡り合ってくれました。
もちろん春虎はまだ育ち始めた雛のようなものですから、穴はたくさんありましたが、単純に呪符を投げつけたり錫杖を叩きつけたりといった、これまでの彼とは明らかに戦い方が異なっているのに気付きます。
ただ力任せなだけでなく、より繊細に、工夫を凝らして戦う。初めて、春虎もまた「陰陽師」なのだと実感させられました。今の春虎に比べたら、かつての彼の戦いは子どもの喧嘩のようなものだったのかもしれません。
もちろん、大友と『D』に受けた影響がそれだけ大きかったということなのでしょうが、一緒にそれを視た夏目や冬児たちの中でも、春虎の変化は群を抜いているように思えます。
それが、ただ精神的なものだったのか、それとも彼だけに何らかの呪術的な効果が働いたのかは判然としませんが、少なくとも彼が、卓越した術者ふたりの対峙から誰よりも多くを学び取ったということは確かです。
いやはや、何度か目覚ましい戦果を上げたとはいえ、夏目からはどうしても見劣りがした春虎ですけれども、ここにきてようやく、夏目と共に戦う者として並び立ったなあと、そんな風に思いました。夏目本人としても、本当に嬉しいでしょうねえ。


さて、若き陰陽師の活躍の一方、大人たちも引き続き、ちゃんと格好良い姿を見せてくれています。
特に天海さんには思わず惚れぼれ。やっぱり一流は違うんだなあ! 同じ『十二神将』でも、小暮や鏡のようなド派手さとはまた全く質の違った呪術戦。彼のような人間をして「老練」と呼ぶのではないでしょうか。
しかし、そんな彼でさえ全てを見通すことができないのが、陰陽の闇というもの。
他人を騙し、欺き、裏から全てを操る芸達者な鴉たちの存在が明らかにされ、こちらとしては、「どこからどこまで?」と頭の中をクエスチョンマークでいっぱいにすることしかできませんでした。


あちらこちらで急展開だらけで、もうてんやわんや状態。しかも、次はさらなる衝撃の展開が待ち受けているというのだから、たまりません。
春虎はいったい何を得たのか。夏目や京子の関係はどうなってしまうのか。陰陽道の暗部はどんな動きを見せてくるのか。
あの人はどうなったのか。この人はどうなっていくのか。みんな気になって仕方がない。次の巻が本当に待ち遠しいですね。


おめでとう夏目さん! 封入の書き下ろし短編にはきゅんとさせられました。