まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

あくまでも、妹が欲しいんです。

あくまでも、妹が欲しいんです。 (一迅社文庫)

あくまでも、妹が欲しいんです。 (一迅社文庫)

ストーリー
無類の妹好きなのにリアルの妹がいない高校生、二宮シンヤ。
その迸る想いを胸に妹イラストを描いていたシンヤの前に、どこか間の抜けた悪魔・リリンがやってくる。
リリンに願い事を叶えてもらい、見事に妹を二人、家に迎え入れたシンヤだったが……。



「あの」水無瀬さんご先生と犬洞あんさんのコンビが一迅社文庫に舞い降りたということで手に取ってみました。
妹というものに絶対の価値を置く少年が、悪魔の少女にお願いして、妹をふたりも作ってもらうドタバタコメディです。
突っ込みどころも多々ありましたけど、予想からだんだんずれていくストーリーと、オチの付け方にはニヤリとさせられました。
何より妹たちは可愛いですね! ええ、これはとても大事なことですよ!


妹を純粋に求め続ける主人公・シンヤの妹への愛が凄い。
何が凄いって、妹好きが高じて妹キャラ専門のイラストレーターになっちゃうところとか、急にできた妹ふたりに対して平然と兄らしく振る舞えるところとか、色々と凄い。
もうこの男、世の中の女性を「妹」と「それ以外」で見ているとしか思えません。クラスメイトの前で平然と妹誘拐行為への衝動を語る突き抜けた妹好きっぷりには、恐怖を通り越して一種の尊敬さえ覚えます。
いや、普通はですね、単に妹キャラが好きというだけならば、いくら血がつながっている設定で現れたとはいえ、急にできた妹を妹だとは見られないと思うのですよ。
でも妹至上主義のシンヤにとってはそんなことはどうでもいいようです。彼としては、カインとレインが妹と呼べる存在であること、それだけが全てで、そして十分なんですね。
これだけ揺らがない信念をしっかり持っているのは、一周回って賞賛に値すると思うのです。まあ、傍から見たら変態以外の何ものでもないのですが!


ツンツン妹・カインと、寡黙系毒舌妹・レイン、ついでに事務員(妹)・リリンとの生活は実に楽しそう。
これだけ可愛い子が揃っているならば別に妹じゃなくても良さそうなもんですが、シンヤさんはそれじゃだめなんですよね、はい。
妹たちから毎日罵倒され、時にデレられながら続いていく素敵な毎日。しかしある日、それはあっさりと失われてしまいました。
この決断の早さも、シンヤの特殊性を際立たせていると思うのですがどうでしょうか。それでいいのかよ! とこちらが言いたくなってしまうような、流れるような決断でした。
それから、妹を再び探す旅へと出るわけですけれども、このあたり、正直私としてはしっくり来なかったんですよね。
カインとレインは確かにいます。でもそれは、かつて楽しい日々を過ごしたふたりとは別人なのです。もし彼らの狙いが成功しても、私だったら喜べそうもありません。そんな風に思いながら読んでいたのですが……。
ああ、なるほど。こうつながってくるのか! なるほど、これなら文句ない。さりげなくタイトルとも関連しているあたりがニクいですね。


両親は本当に協力しちゃっていいのかとか、途中からリリンさんの影がめちゃくちゃ薄くなったよねとか、そういえばしおりもいつの間にか消えてたなとか、言いたいこともたくさんありますが、「妹」というものの扱いが面白かったですね。
ただ、途中から妹たちとのいちゃいちゃがほとんどないので、ラブコメを期待していた身としては多少物足りなさもありました。
もし続くようなら、カインとレインとリリン、あとしおりも交えた、ニヤニヤラブコメが見てみたいものです。


イラストは犬洞あんさん。カインとレインの姉妹がとても可愛い。
しおりの「ただし、幼なじみ…」イラストは、妙な哀愁があって笑ってしまいました。


なぜわかめのシーンをイラストに指定しなかったのですか!