まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

六花の勇者2

六花の勇者〈2〉 (集英社スーパーダッシュ文庫)

六花の勇者〈2〉 (集英社スーパーダッシュ文庫)

ストーリー
「七人目」は去ったものの、ロロニアの登場によってまた七人になってしまった勇者たち。
時間がない一行は、お互いに疑い合いながらも魔哭領の奥へと進んでいくことに。
休憩する彼らの前に、凶魔を束ねる統率者の一体・テグネウが突如姿を現して……。



1巻ラストのどえらい引きから、一体どんな風に続くのか戦々恐々としながら読みましたが、なるほどこうなりましたか。
魔神の元を目指しながら「七人目」を探すという基本の流れは同じなのだけれど、事件の解決に至るまでの見せ方をガラリと変えてきましたね。
そのおかげで、1巻とはまるで違った印象の物語になっていました。いやはや、お見事です。
物騒なタイトルが付けられたプロローグ。そこで、あるキャラが、あるキャラによって殺害されてしまいます。
この人はなぜ、こんな事件を起こさなければならなかったのか。時間はロロニア登場時まで遡り、少しずつ過去の回想を挟みながら、かの人が事件を起こすまでの経緯が明かされていきます。
初めから犯人が明かされていることもあって、1巻に比べればドキドキはそれほどでもなかった気がしますけれど、ただその分、ひとりのキャラが深く描かれたことで、お話にぐっと奥行きが出てきたと思います。
悲劇を避けるため、必死でもがくひとりの勇者。しかし、プロローグで確定済みの運命からは逃れられるわけもなく……。まるで、蟻地獄へ吸い込まれていく蟻の姿を見ているような感覚でした。


キャラクター同士の関係がだいぶ進んでいたのも重要な点ですね。
特にアドレットは、いつの間にかすっかり皆から信頼されていて驚きました。妙なリーダーシップまで発揮してます。
あれだけ活躍したのだし、何より素直でまっすぐなのが目に見えるから、信用されるのもまあ当然なのかもしれません。
でも、本当に彼が「七人目」でないのかということについては、まだ議論の余地があるような気もします。当人たちはもうアドレットではないと確定しているように言っていますが……そんなにしっかりした証拠だったかなあ?
フレミーについてだけ言うならば、アドレットを信じる(信じたい?)確固たる理由があるので、この信用っぷりも分かるんですけどね。
しかし、なんだ、フレミーは本当に可愛いなあ! ストーリーが殺伐としているからこそ、彼女のほのかな想いはとても微笑ましく、緊張の連続で疲れた心を癒してくれます。
自分の気持ちが分からないながらも、しっかり嫉妬とかしちゃっているところや、散々悪口を言いながらも、その実アドレットのことが心配で仕方ない様子が、たまらなく愛らしい。
願わくは、彼女だけは「七人目」であって欲しくないものです。そうではないと言い切れないのが、また苦しいのだけれど。


読み終わってから気付いたのですが、作中時間が1日しか経っていないのですね。なんて濃密なんだろう。
多少先へは進んだけれど、まだまだ魔神の地へは遠く、目下の敵は凶魔の三首領たちと。そういうことになっていきそうです。
テグネウは、やり方は汚いながらもどこか憎めないキャラでしたね。カーグイックも、出番は少ないけれど真面目そうに見えました。凶魔には凶魔なりに、彼らの正義があるのかもしれません。
凶魔たちとの、一層加速していくであろうバトル展開に期待せずにはいられませんね。
それからもちろん、未だに解けぬ「七人目」の謎。ひとつ糊口をしのいで、また団結力が高まったように思える一同ですが、それは逆に言えば油断が大きくなったということでもあります。
誰も信じられない現状は何も変わっていないのです。次に仕掛けられるのはどのような罠でしょうか。勇者たちはそれを切り抜けることができるのでしょうか。
ああ、そうでした。エピローグの最後に出てきたあの人! 好きなキャラだったのでちょっと嬉しいです。一体どんな関わり方をしてくるのでしょうね。
気になることが多すぎて、わくわくが止まりません。次の巻が待ち遠しいです。


気を抜いているとゴルドフが可愛く見えてきて困る。