まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

聖剣の刀鍛冶12

聖剣の刀鍛冶12 (MF文庫J)

聖剣の刀鍛冶12 (MF文庫J)

ストーリー
セシリーのプロポーズから数日、軍国への市民の移住計画と並行して行なわれた、騎士団による封印の再強化計画。
順調に計画が進んでいた矢先、突如ブレア火山が噴火し、溶岩流が市へ向かって流れ落ちてくる。
思わぬ緊急事態に焦るセシリーたちだったが、そこに予想外の助っ人が現れ……。



まるで予想だにしなかった好展開に、いやはや、拍手拍手。
いやね、帝政列集国が誕生したあたりから、ほとんど暗いことばかりだったじゃないですか。そりゃもちろん、プロポーズを筆頭に、おめでたいこともありましたけれども。
セシリーとルークならきっと大丈夫! とか言いながらも、正直全てがハッピーエンドというわけにはいかないだろう、むしろどちらかといえば悲しい結末が待ち受けているのではないか、なんて思っていたわけです。
ところがどっこい。ここでこのどんでん返しっぷりですよ。いやあもう、テンション上がりまくり! ひゃっほう!
あれだけ暗雲垂れこめていた状況からここまで持ってくるんだから、お見事と言うほかありません。
前巻のラストから今回にかけての数百ページで、すっと光明が開けた感じです。物語のクライマックスへ向けて、一気に加速したように思います。あとはもう、最後まで走り抜けるだけですね。


家族はおろか街中の人々に祝福されて、外堀を埋められている感たっぷりのセシリーとルーク。
そんな周囲の暖かい視線とは関係なく、式はせずとも、早くもおしどり夫婦といったご様子。仲睦まじく何よりでございます。あのルークがずいぶんと素直で笑ってしまう。ほんと、ここまで来るのにずいぶんかかったよなあ。
でも、新婚さんのきゃっきゃうふふを楽しむ時間は、彼女たちにはほとんどありません。
次から次へと困難が降り掛かってくるし、最悪なことに、最大の困難がこれから来ると分かっているのに何も対策ができていないから。
セシリーの熱い気持ちに押されてこういうことになって、傍目には幸せが溢れているけれど、ルーク本人にとってはふがいない自分を責める時間が続いたのだろうと思います。
セシリーは、自分が守らなくてはいけないのに! 元々プライドが高い彼のこと、悔しい思いでいっぱいだったでしょう。
ルークのことを第一に考えるセシリーでもどうすることもできない問題。そこで彼を救ったのは、他ならぬリサの勇気と決断でした。
今回のリサは、本当に格好良かったです。自分の気持ちを押し込めてでも大切な人たちのために行動できる、誰よりも強い女の子だったのだなあと改めて感じました。
やっぱりルークとセシリーには、リサがいないと駄目ですね。


そして今ひとり、セシリーにとっていなくてはならない、大切な人がいます。
この結果は、決して間違いなんかじゃない。少なくとも、彼女にとってはそうではない。
きっと、ずっと一番の親友だった彼女だけに見える、特別なものがあったに違いありません。
綺麗な花嫁姿にすっかり油断させられてしまっていた。エピローグの爽快感ときたら、ああもう! ちくしょう、やっぱり最高に格好良いよなあ!
さあここからが反撃です。悲劇だけでは終わらせない。この騎士と刀鍛冶と聖剣の物語が、一体どこへ終着するのか。わくわくしながら、続きを待ちたいと思います。


あまり描写は多くなかったけれど、銘無しにも敬意と感謝を。