まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

クロス×レガリア 吸血姫の護りかた

ストーリー
トラブル解決を1回千円で請け負う学生ボディーガードの少年・戌見馳郎は、中華街の片隅で倒れている少女を発見する。
追われているという自称仙人の少女・ナタを助けるため、馳郎は彼女を助手として一時雇い入れることに。
一週間後、ナタを追ってやってきたのは、<鬼仙>と呼ばれる吸血鬼たちだった……。



三田誠先生の新作。あらすじから吸血鬼ものだと思っていたのですが、どちらかというと中華ものの方の色が濃いように感じます。舞台も中華街ですしね。
ヒロインのナタは“哪吒”から来ているんでしょうし、鬼仙たちが用いる武器・鬼宝は“宝貝”が元ネタなんでしょう。
戦闘モードとなったナタの姿など、性別は違うとはいえ、まさに封神演義――中国古典の方です――の哪吒そのものでした。
かの有名な乾坤圏や火尖槍を、口訣を唱えて起動させてはぶん回す「女の子」(ここ重要)。これだけでもう、テンションが上がるには十分すぎるというものです。


主人公の馳郎は、1回千円で依頼をこなす何でも屋……のようなボディーガードを営む高校生。
ナタを拾ったことから非日常に巻き込まれていくごく普通の少年、と思いきや、明らかに超科学技術の賜物であるジャケット型コンピュータ<カエアン>を着用していたり、謎めいた妹の存在があったりと、彼自身にもそれなりの秘密がある様子。
物語の始めから特にインパクトが大きかったのは、やはりカエアンですね。何このジャケット、めちゃくちゃ格好いいんですけど。
人工知能を備えていて喋るだけならまだともかく、なんか金属の腕とか生えるし、そのまま屋根の上とか飛びあがっちゃうし、一体どうなっているんです?
おかげで、蓮花と少影に襲われてもそこそこ立ち回ることができていて、こんな切り札を持っている馳郎はやはりただ者じゃないんだろうなと、早くも予感させてくれました。
蓮花と少影は、敵ながら魅力的なコンビだと思います。少影はまあちょっと、口から出る単語が下品すぎるような気がしますけど。そっちの趣味でもあるんですかね。
とんでもない重量の鬼宝を振り回す怪力。植物を操る異能。明らかに人間とは異なる力を持った鬼仙たち。
そして、そんな異能の持ち主たちを歯牙にもかけないような、それでいてまだまだ本気を出していないような、秘めたる強さの片鱗を見せたのがナタでした。
最強のヒロインっていいですよね。最強+ヒロインですよ。戦闘でもそれ以外でも無敵じゃないですか。ねえ。


蓮花たちとの戦いから、事態は思わぬ展開へ。兵器として生まれたナタの苦悩が印象的でした。
たった一週間だったけれど、優しくしてくれた馳郎。巻き込みたくないという気持ちももちろんあって、自分はこのままでいいのだと意地を張って、でもその胸の奥には……。
一方の馳郎も、ナタを救いたいのに、人間である自分にできることは少なく、ためらい、後ろを向きかけてしまいます。
しかし彼は、それでもやらなければならなかった。自分の信条と、大切な人のために、大きな一歩を踏み出しました。
ナタの素直な思いと、馳郎の勇気がひとつになって、奇跡を起こす。人間が、鬼仙と真正面から対峙する。
終盤の馳郎はいちいち格好よくてずるいですね。「レガリア」の意味とか、「千円」に込められた思いとか、ゾクゾクします。
それにしても、この伏線回収には唸らされました。ううん、お見事。


事件は一段落したものの、賢き妹リコの言うとおり、まだまだこれからが大変です。
うやむやな部分や、明らかになっていない謎もあるので、次巻以降の展開に期待ですね。
とりあえず気になるキャラ筆頭・可愛いリコの出番をもっともっと! よろしくお願いします!


イラストはゆーげんさん。ツヤのある絵柄が特徴的ですね。
ナタや蓮花の色々な部位の質感がいやはや、なんとも目に毒です。


最大の萌えキャラはカエアンでファイナルアンサー。