まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

ドレスな僕がやんごとなき方々の家庭教師様な件

ストーリー
同盟国への派遣を目前に突如失踪した、“万能の天才”グリンダ・ドイル。
国際問題を回避するため、身代わりとして白羽の矢が立ったのが、グリンダの双子の弟・シャールだった。
抵抗も虚しく女装させられたシャールは、同盟国の王様一家の家庭教師を務めることになってしまい……。



野村美月先生の新作ということで、一も二もなく飛びつきました。
ここまでコメディに特化した作品は初めてでしたが、やはり抜群の面白さですね。
地の文は主人公の一人称なのですが、この一人称は改めて見ると、ずいぶんと独特。何といえばいいんでしょうか。表現が難しいのだけれど、こう、なよっとしてるんですよね。
クセは強いけれど、私は結構好きです。いちいち慌てたり、焦ったり、驚いたりするシャールが、この文によってとても微笑ましく描かれていると思います。ハチャメチャコメディにはぴったりの文体ではないでしょうか。
凡人でありながら、大天才である姉を演じ、仲間もいない異国の王宮で家庭教師になるというハードルの高い任務。
いくら双子とはいえ性別が違うから、今にもバレてしまいそうで、でもギリギリのところでバレなくて、と危ない橋を連続で渡るような日々が面白おかしいです。


仕事相手となるエーレン国王一家をはじめ、登場してくるキャラはみんな魅力に溢れています。
まずはやっぱり、雪さんかなあ。この正体はちょっと予想外でした。ちょっとフレンドリーすぎるんじゃないですかあなた!
とてもその立場を感じさせない、天真爛漫少女といった具合の天然っぷりが素敵でした。実年齢は気にしたら負けなんだ。
出てきた瞬間に頬が緩んでしまったのは、第二・第三王女の更紗と織絵。
自由気ままないたずらっ子として、色んな場面でお話を引っかき回してくれました。子どもらしい暴れっぷりで、見ているこちらが元気になります。
みんなが大好きだという気持ちが、ことばや行動に素直に表れているから、いたずら三昧でもちっとも憎めない。抱きしめたい。
第一王子の竜樹は、世継ぎとして立派な志を持っているけれど、まだ子どもっぽさが抜け切らなくて、精一杯背伸びしている様子。応援してあげたくなります。
芽生えた想いがこれからどうなっていくのかは見ものですね。あまりに不幸な初恋ではありますが……。
考えの読めないシザエル王や、同じく隠し事がいっぱいありそうなヘルムート、特殊な趣味をお持ちのメイドのアニス、ナルシスト騎士ギルマーと、まだまだ濃いキャラだらけ。
困ったことに、女装シャールも可愛いんだなあ。イラストとかぼんやり眺めてるとなかなかくるものがあって……いかんいかん。
しかし、なんといっても一番魅力的なのは第一王女・聖羅でしょう。もう圧倒的に可愛い。早くシャールとくっついてほしい。9歳? 知ったことじゃないですよ。
シャールとの関係が本当に素敵。ただ頼りないだけだったシャールが、少しずつ彼女の無表情を溶かし、その思いに近づいていく姿に、胸が温かくなりました。
その麗しき氷の表情に秘められた優しさ、思いやり、そして愛情にきゅんときます。どんな天才でも、やっぱり彼女は9歳の女の子なんですね。
やっと見せてくれた笑顔の破壊力ときたら! もうほんと、たまりませんですな! なんて恵まれた職場なんだちくしょう!


とりあえず、シャールが家庭教師として受け入れられて、周りの人との関係もしっかり築かれたので、これからどんな変化が起こってくるのか楽しみですね。
特に気になるのはやっぱり恋愛方面でしょうか。あの人やあの人や、あの子に迫られたら、シャールはどうなっちゃうんでしょうか。ドキドキ。
とりあえず個人的には、シャールと聖羅姫のイチャイチャに期待しています。はい。
未だ捕まらないグリンダが、シャールたちにどう関わってくるのかにも注目ですね。ああ、次巻が待ち遠しい。早く出てくれえ!


イラストはkaroryさん。上にも書きましたが、女装シャールが心を惑わされるほどに可愛い。アンニュイな表情が特に素晴らしいと思います。
涙を流す聖羅姫のイラストにはやられました。もっと色んな表情の彼女を見てみたいですね。


ところで、この双六はどこに売っていますか。