まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

僕の妹は漢字が読める3

僕の妹は漢字が読める3 (HJ文庫)

僕の妹は漢字が読める3 (HJ文庫)

ストーリー
妹たちとともに、少しだけ歴史の変わった23世紀の日本に戻ってきたギン。
作家デビューを目指して超実験的な小説の執筆に励むギンの元に、今度はギンの「実妹」を名乗る人物からメールが届く。
どうやらその「実妹」は、ギンの出生の秘密を知っているらしく……。



1巻を読み始めた頃には、まさかこんなことばをこの作品に対して遣うときがくるとは夢にも思っていませんでしたが……“安定して”面白かったです。
いやあ、キャッチーな設定とオオダイラ文体だけがひとり歩きして話題になってしまった感がありますけど、ラブコメとして見ても面白いし、主人公の成長も目に見えるしで、意外なほどしっかりしたストーリーなんですよねえ。
初めからずっとブレずに、そしてフリーダムに、独自のギャグ路線を貫いているように思います。
作者もきっと楽しんで書いているのだろうなあということが予想できて、まああくまで予想でしかないのですが、読んでいるこちらまで楽しくなってくる。
もうここまできたらどこまででもついていくので、このまま突き抜けていってもらいたいものです。


3巻目にして、実妹・アマネコが登場。ギンをめぐって、義妹・クロハとの怒涛の妹対決へ突入します。
実妹と義妹による兄の取り合い。いやあ、実に正統派文学的だなあ!
ところどころで兄思いなところを見せつつも、これまでは態度をはっきりさせてこなかったクロハ。
義理の兄妹という居心地のいい関係に甘えて、意志を表明していないことが、ここにきて裏目に出てしまいました。そりゃあ、いきなり新たな妹が現れて、血の繋がりできょうだいというアドバンテージさえ奪われてしまうなんて、想像できませんものね。
自分とは違って、素直にギンへ好意をぶつけるアマネコの姿に、焦りを隠せないクロハがなんとも可愛らしかったです。


クロハかアマネコか。何度か訪れた、ここぞというところでのギンの選択は、なんともはや、ひどいものでした。
そこまで分かっていてどうしてそっちを選んじゃうのさ! 誰でも分かるレベル1選択肢だよそれ!
しかし、どれだけ理不尽な選択をしても、「ギンだから仕方ないか」と思えてしまうあたり、彼はやはり、相当の大物なのかもしれません。もちろん駄目な方で。
とはいえ、上に書いたとおり、ギンも経験を積んで、少しずつ成長していました。
ただがむしゃらに、自分の信じるものだけを周りに押し付けていたギンはもういません。耳触りのいいことばだけに踊らされず、きちんと考えて、他人のために行動できるようになりました。
心の奥底で、本当に妹を思っているというのは、初めからずっと変わっていなかったのかもしれませんけどね。


タイムトラベルはなかったけれど、その分ラブとコメディ増量で、最初から最後まで楽しく読みました。
なんとも気になるところで続いてくれたので、次巻が待ち遠しくて仕方ありません。
今回の勝敗はこういう結果になったけれど、まだユズさんだっていることだし、今度はどのヒロインが前に出てくるのか実に楽しみです。
チョウマバヤシ博士の思わせぶりな伏線も、さて、どんな風に効いてくるのかな。


2.5じげんこ。ああ、その発想はなかった……!