まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

ランジーン×コード tale.4 パラダイス・ロスト 1st

ストーリー
夏の終わり、世間ではコトモノによる事件が続発し、人々の間で不安の声が高まっていた。
そんな折、社会から離れたコトモノだけの楽園を作るという計画“ノアの方舟”が提唱される。
提唱者は、10年前にロゴのもとを去った彼の母親・武藤凛子だった……。



5巻との上下巻構成で、2か月連続刊行の第一弾。表紙イラストもセットになっているようですね。
上巻ということで、お話としては何も解決しておらず、まだ続くのだけれど、クライマックスへ向けて盛り上がってきているのを感じます。
今までの長編(1〜3巻)に比べると、ずいぶん読みやすくなっているようにも思いました。
ひとつひとつのエピソードがわりとどっしりとした作品ですから、2冊に分けて、その分丁寧に描くやり方は、わりと理にかなっているのかもしれません。


10年の空白を経て、遂にその姿をロゴの前に現した母・凛子。
彼女と、彼女の所属するイントロン社の影響により、コトモノと人間を隔離しようという気運が高まっていきます。
これまでは、人間たちもそれなりに納得して、コトモノと共に暮らしていたはずです。でもやっぱり、心の底では彼らを忌避する気持ちを持つ人が多くて、さまざまな刺激を受けた結果、それが遂に爆発してしまった。
人々の気持ちも分からなくはありません。自分たちとは全く違う、得体のしれないものが、危害を加えてくるかもしれないとなったら、怯えるのも当然でしょう。
でも、彼らの多くはおそらく、くるみの家に集うようなコトモノたちのことを知りません。自分の世界さえ守られるならば、人とそんなに変わらないコトモノたちがたくさんいるのだということを、知らないのだと思います。
ロゴをはじめ、くるみの家の面々は、人間と共に生きることを本当に大切にしています。
コトモノが人々から糾弾され、また逆に、コトモノが人々を威嚇する、今のような状況を、くるみの家のみんながどのように見ているのかと考えると、胸がぎゅっと痛くなりました。


今まではしゃにむに危険へと飛び込んでいったロゴですが、今回は悩んでいました。
眞子先生は、親代わりとしてぴったりの、素敵な人です。だからこそ、彼女に諭されて、あのロゴも迷ったわけですから。
先生の思いも分かります。それでも、答えを見つけるために走り出すロゴを見て、安心してしまいました。これでこそロゴらしい。
先生も、結局はこうなることが、どこかで分かっていたのかもしれません。裏切りを笑って送り出せる先生が、とても格好良かったです。
周りに心配や迷惑をかけるかもしれないけれど、やっぱりロゴには前を向いて、まっしぐらに突き進んでほしい。いつも隣にいてくれる由沙美と一緒に。


追い詰められて、追い詰められて、そしてラスト。思わず手が震えました。最後の見開きイラストはずるい!
そう、忘れかけていたけれど、この人がいたんですよね。これでやっと、主役揃い踏みといったところですか。
さあ反撃です。ロゴもキツネも、大変な状況だけれど、ここからどんな巻き返しがあるのか、実に楽しみ。
それにしても続きが気になって仕方ない。連続刊行で良かった。


ユーマさんのサディスティックな目付きにゾクゾクしました。あの糸に絡め取られたい。