まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

ココロコネクト カコランダム

ココロコネクト カコランダム (ファミ通文庫)

ココロコネクト カコランダム (ファミ通文庫)

ストーリー
終業式後の部室で、文研部メンバーは謎の文字を見つける。
「永瀬・稲葉・桐山・青木」、そして「12時〜17時」という文字に首をひねりつつも、とりあえず放置する五人。
ところが12時になったとたん、伊織と唯の二人が、身体・精神ともに子供に戻ってしまい……。



今回太一たちに降りかかったのは、子供への時間退行現象
いくつか、今までのものとはがらっと違う部分がありますが、彼らにとって何よりも問題なのは、周りから見て分かってしまう現象であるということですね。
入れ替わりや欲望開放なら、まだなんとかごまかしがきいたものの、目に見える変化が起こるとなると、ごまかすのもそう簡単ではありません。
その分、時間帯が指定されていたり、なぜか太一にだけは現象が起こらなかったりするわけですけどね。
現象によって社会的にまずいことになりかねない欲望開放なんかに比べれば、まだいい方なのかとも思いつつ、周りから現象を隠し切ることを考えると、逆に難易度は上昇しているような気もします。
こんな厳しい条件でも、あくまで5人の中で解決していこうとする姿勢を貫く姿に、改めて彼らの強さを感じました。


時間退行によって、当時の記憶が鮮明に思い出されたことから、またもすれ違ったり苦しんだりする文研部の面々。
特に目立っていたのは桐山ですね。そして青木。今回の主人公はこのふたりだったと言ってもいいんじゃないかと思います。
三橋と再会して、自分がずっと逃げていたことを突きつけられ、さらにずっと自分を肯定してくれた青木の「好き」さえも疑わしくなってしまって、すっかりふさぎこんでしまう桐山。
青木は青木で、自分の気持ちがどこから来たものなのか分からなくて、当の桐山にさえ当たってしまう始末。
それでも、そこで立ち止まらないのが青木というやつの凄いところです。まったく、青木といい、桐山といい、このエネルギーはどこから来ているんでしょうか。これが若さなの? そうなの?
ううん。前に進むことだけが全てではないだろうし、立ち止まっても別にいいじゃないかとは思いますけど、それでもやっぱり、前に進める人は眩しく輝いて見えますね。まだ高校生でこんな生き方ができるのか。いや、高校生だからこそこんな風に生きられるのか。


この作品の青春は、もどかしいとか、じれったいとか通り越して、軽くめんどくさい域に達していると思うんですよね。
長い長いモノローグとか読んでると、「いいから、もう分かったから」って気分になってくる。
めんどくさければ青春なのでしょうか。まあ、否定はしませんけれども。
ポジティブなものにしろ、ネガティブなものにしろ、キャラたちが全力で生きているから、圧倒されて、逆に気が引けてしまうというところはあると思います。つまり私の精神が若々しくないということですね! ちょっと落ち込む。
現役の中学生や高校生なら、また違った気持ちを抱くのかなあ。


<ふうせんかずら>とは別の<二番目>が登場するなど、謎はますます深まるばかり。
一方で、太一をめぐる永瀬と稲葉の恋の戦いは、ますますヒートアップしていきそうで、こちらも大いに気になるところです。
それにしても稲葉さん、一度デレたら存外に一直線なんですね。永瀬とけん制しあいながらのやりとりがとても楽しい。
太一はふたりに甘えてばかりいないで、早いうちに決断するべきだと思います。


「ココロコ」って公式略称だったのか。まあ、語呂はいいよね。