まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

パーフェクトフレンド

  • ストーリー

周りのみんなより、ちょっとだけ頭がよい小学四年生の理桜。
不登校の少女「さなか」の家を訪ねるようにお願いされ、友人のややや、柊子とともに彼女の家へと向かう。
ところが姿を現したさなかは、早々に大学の勉学を身につけた超・早熟天才少女であった……。


面白かった! ええ、素晴らしく面白かったですとも!
いやあ、野崎先生は裏切らないなあ。毎回期待のハードルを上げてかかっているんですが、それでもやっぱり魅了されてしまいます。
なんなんでしょうねこの安心感。いやまあ、安心感というのもおかしな話ですけどね。
読んでてこんなに安心できない、油断のならない作品たちもそうはないだろうに。


主人公は小学四年生にしてはかなり頭の回る女の子・理桜と、大学を既に卒業し自宅に引きこもって数学者として働いている少女・さなかのふたり。
ここに、脳天気な友人のややや(「ややや」で名前です)、引っ込み思案の柊子を加えた4人がメインの登場人物です。
物語は、理桜、ややや、柊子がさなかを学校に引っ張り出すところから始まります。
友達の意義を理解できず、それを知るために学校へ行くと言い出すさなか。
自分を上手くやり込めるさなかを苦手に感じて避けつつも、何かと面倒を見てしまう理桜。
この両者が、友達というものを本気で突き詰めて考えて行くやり方が実に興味深い。
友達の意味を調べていく中で、さなかはその天才を発揮して、とんでもない発見をこなしてしまいます。
このあたりの言い知れぬ不気味さが実にいいですね。実際にはもうファンタジーの領域なんでしょうが、さなかの言には妙な説得力があって、本当にこんな方程式や定数が存在するのかもしれないとつい思わされる。もう完璧に手の平の上です。
さあ全ては済んだ、学校へ行く意味は無くなった……なんて言っていたさなかだったけれど。ああ、なんてベタなんだ。
友達について調べて一緒にいるうちにいつの間にか、なんて、いかにもな展開ではありますが、それがたまらない。たまらなく素敵。


で、普通ならここで大団円といったところなんでしょうけど、ここからがこの作品の本領発揮というところ。
なんでこういうことをしてくるのか! 妙に平和だから何かあるなとは思っていたけれど、これはあまりに辛すぎる。
必死でエンターキーを叩くさなかの姿が目に浮かんできます。胸が痛くて仕方ない。
油断はしていなかったはずなんですが、いきなりのショックというものはやはり大きいものですね……。
そんな中で怪しげな魔法使いが登場してきて、出ましたよオカルトですよ。
ここまでとことん科学的にやってきたのに、終盤になってからのこの覆し。もはや様式美とでも言うべきでしょう。
しかも、一度覆したものをまた平然と覆してきたりするからどこまで信じていいのかさっぱり分からない。
もうこのあたり、詳しくは書きませんけど、そんな風にとことん翻弄されるのが本当に楽しい。大好きです。


色々遠回りをしたけれど、つまるところこの作品で描かれているのはただひとつ。プロローグの最後の一行。これだけなんです。
論理的にいくら探ったところで、決して理解できないものがここにある。でもだからこそ大切で愛おしい。
それは、お話の本筋とは関係のない、友達4人のかけあいの中でいくらでも確認することができます。
こんなに楽しくて笑いに溢れる関係が、必要のないものであるはずがありません。
ああ、全く、友達とは素晴らしいものなんだなあ。


エピローグの最後に最大の爆弾。これもまた様式美であります。
今まで野崎先生が使ってこなかったやり方であるだけに、ファンであるほど爆発するのではないでしょうか。私は思わず絶叫するところでした。にやり。