まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

狼と香辛料ⅩⅦ Epilogue

狼と香辛料〈17〉Epilogue (電撃文庫)

狼と香辛料〈17〉Epilogue (電撃文庫)

  • ストーリー

『太陽の金貨』事件から数年。ホロからの手紙を手に北へと向かうノーラやエーブ他、旅で出逢った女性たち。
ところがその手紙は、ロレンスに断りなく、ホロが彼女たちに送りつけたものだった。
知らぬうちにホロを怒らせたのではないかと戦々恐々とするロレンスだったが……。


前巻で素晴らしく綺麗な終わりを迎えた今作品ですが、これで本当に最後の最後。
ちょっとした後日談と短編3本が収録された、真の最終巻です。


ホロと共に生きることを決めたロレンスも、遂に念願の店を持つまでに至りました。
元々行商人だし、てっきり商品を取り扱うものだとばかり思っていたのに、まさか湯屋だとは。まるで予想外でしたね。
想いを告げて気持ちを確認しあっていても、ホロのご機嫌をうかがうのがロレンスの役目であることに変わりはないようで。
言葉遊びで翻弄したりされたり、おちょくったりおちょくられたり、そんなやりとりひとつひとつに愛情が垣間見えて思わず頬が緩みます。
あとホロは結構な甘えたがりですね! 今までも薄々そんな感じはしていたけれど、吹っ切れるとやっぱり違うな。
見せつけてくれちゃって、何このバカップル、改め、たわけカップル。幸せそうでなによりですよこんちくしょう!


ノーラ、エーブ、ディアナ、エルサにフラン。
改めてみるとなかなかに魅力的なヒロインが揃っていたものです。
個人的にはノーラの化けっぷりに驚きましたね。か、可愛いじゃないですか。もちろんイラスト込みで。
ロレンスのひどい言われようには笑ってしまいました。もうこてんぱんです。つくづく女性に弱い雄じゃな。
まあそれはともかく、男性キャラも含め、過去に登場した名前がこうやって一堂に会するのを見ると、やはり感慨深いものがありますね。
この名前ひとつひとつと、それぞれ別の物語をつむいで、ここまでやってきたわけですから。
ロレンスとホロと一緒に旅を続けてきた一読者として、心地良い達成感と満足感でいっぱいです。


短編もそれぞれ趣のあるお話でした。
偶然かもしれませんが、なんとなく過去、現在、未来を思わせる3本でしたね。
ロレンスとホロの喧嘩を描いた「狼と灰色の笑顔」は、周りから見るとややこしいけれど実は仲良し、というふたりの関係が分かりやすく表れていてとても好きです。
お互いに相手をコントロールしているつもりになっているところが彼ららしいですよね。子供っぽいというかなんというか。
これは時間的にちょっと前の話だけれど、今でもこの関係はそんなに変わっていないのではないかと思います。


長く続いた物語もこれでおしまい。ロレンスとホロの人生はまだ旅の途中ですが、ここから先はもう、想像するほかありません。
経済のピンチにはドキドキさせられ、窮地を切り抜ける妙案にはハッとさせられ、出会いと別れにはじんわりと切なくさせられました。
経済の仕組みとか、微妙な言い回しや隠喩とか、ちょっと難しいところもあったけれど、毎回読み終わった後に楽しい気分になれる素敵な作品でした。時間のあるときにまた読み返したいですね。
支倉凍砂先生、文倉十さん、長い間お疲れさまでした。そしてありがとうございました。次回作も楽しみにしています。


いつまでもお幸せに。