まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

オブザデッド・マニアックス

オブザデッド・マニアックス (ガガガ文庫)

オブザデッド・マニアックス (ガガガ文庫)

  • ストーリー

ゾンビ映画ばかり観て現実と向き合えない高校生・安東丈二。
しかし、嫌々参加したクラスメイトとの夏の合宿で、本物のゾンビハザードに遭遇してしまう。
クラスの皆が揃うショッピングモールにたどり着くと、そこは委員長・城ケ根莉桜による絶対支配下に置かれていた……。


前々から気になっていた大樹連司先生の新作が出るということで、手に取ってみました。
ゾンビみたいなグロいものはあまり趣味ではないのですが、この作品は面白かったです。


主人公の丈二は、クラスの中にある階級制度に辟易して、ゾンビが学校を襲わないかな、などと日々妄想にふけるちょっと危ない思考の持ち主。
実際にゾンビに襲われて、もちろん怖がってはいるけれど、それ以上に喜んでいるっていうのが凄い。
クラスの最下層にいる自分が、こういうピンチの時に力を発揮してヒーローに……という妄想は、まあ楽しいものではあるかもしれませんが、本当に命の危機にある状況でまだこんな夢見がちなことを言っていられる余裕、これが真のゾンビ者だというのか。
ゾンビについて造詣の深い丈二は、隠れゾンビ好きだった委員長と共に、対ゾンビ戦線のトップへとのし上がります。
この委員長もまた、丈二以上に危ない人だよなあ。ゾンビ者怖い!
丈二と同じくクラスで最下層にいた江戸川や小伏は、その能力を買われて支配階級に。
元々クラスで支配層だったイケメンやリア充たちのグループはその下に。
虐げられてきた人々が虐げてきた人々を虐げて喜ぶ、いびつな仕組みがここにありました。学校ってこんなに殺伐としてるものだったっけ?
江戸川も小伏もすっかり変わってしまい、元リア充たちは周りに乗っかってすぐに手の平を返す。
まったくひどいものだと思いますが、こんな中で副委員長という立場にありながら、現状に疑問を呈すことができた丈二が素晴らしかったです。
自分も心情的には委員長の気持ちに近いものを持っているのに、その気持ちに逆らってまで、自分が正しいと思うことに従って行動を起こした勇気に拍手を贈りたい。
自分がいい格好するためにいずなたちを危機に向かわせたあの姿は、もうそこにはありませんでした。
主人公の成長を見るのはいいものです。やっぱり爽快感があるんだよなあ。


委員長率いる階級制度との戦い、そして最後のゾンビとの戦いはとても熱かったですね。
主人公たちの頑張りで全てが引っくり返るのがたまりません。
丈二をはじめ、江戸川や小伏やいずな、そして委員長にもそれぞれ見せ場があってとても良かったです。ああ、古内はいちいち格好いいところを持って行きましたね!
最後のあの人は、ある程度予想できていたとはいえ最高に素敵でした。なんてジョーカーだよ。


ゾンビとかアクションとかグロとかエロとか青春とか色々詰め込んで、綺麗にまとまっていた1冊だったように思います。
あとゾンビ映画の知識がかなり増えました。ちょっと観てみたいような気もするけれど、映像で見るのはやっぱりきついかなあ……。
ともあれ、評判通りとても楽しい作品でした。他の作品にも手を伸ばしてみたいですね。


イラストはsaitomさん。ちょっぴり荒くスタイリッシュな絵柄が作品に良く合っていたのではないかと。
ピンナップでどうしてもいずなにばかり目が行ってしまうのは仕方のないことだと言えましょう。


好きなキャラはいずなです。はいてないからじゃありません。おもらしがあったからでもありません。本当です。本当ですったら。