まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

GOSICKⅧ上―ゴシック・神々の黄昏―

  • ストーリー

クリスマス当日、プレゼントを渡す一弥にヴィクトリカが所望したのは、15個の謎だった。
必死で謎を集める一弥は、村に起こりつつある異変に気づく。
それは、大いなる変化、すなわち“2度目の嵐”の前触れにほかならなかった……。


最終章の前編。あと1冊で本当に終わってしまうのですね。
今年に入ってから読み始めた私ですが、それでもやはり感慨深いものです。
最後の話ということで、ミステリよりも、久城とヴィクトリカがどうなってゆくのかに焦点が当てられていたように思います。


物語の始まりはクリスマス、ヴィクトリカの誕生日。
ちいさな家でふたりきり、誕生日を祝う久城とヴィクトリカ
今回は特に、久城とヴィクトリカがお互いを大切に想っているのだということを感じさせられました。
久城はまあ、今までも分かりやすくヴィクトリカへの好意が出ていたけれど、ここにきてようやくヴィクトリカも、少しだけ素直な気持ちを述べてくれます。
でも彼女のことばが、別れが迫っていることを知っていたからこそ出てきたものだったのかもしれないと思うと、何とも言えぬ切なさが。
久城の方はそれに気付いていないというのが、また、ねえ。辛いなあ。


別れの時は唐突にやってきました。
久城はてっきり、今までヴィクトリカから離されたときと同じく慌てふためくものとばかり思っていましたが、意外なほど落ち着いていましたね。
ヴィクトリカがいなくなるのと、自分がいなくなるのとでは、やはり心境も違うものなのでしょうか。
あるいは、これまでの大変な経験が、彼を一回りも二回りも大きくしてのけたのでしょうか。
久城がいなくなった翌日、ヴィクトリカにも遂に迎えが来ます。
セシル先生に渡された久城からの手紙を、心のよすがにするために、ヴィクトリカが取った方法が凄かった。壮絶と言っても構いません。
彼女にとって久城のことばは、それだけ大切で、かけがえがなくて、いつまでも取っておきたいものだったのですね。
セシル先生との別れにはじんとしてしまいました。久城だけじゃない。セシル先生やアブリルの想いも、きちんと伝わっていたのですね。


故郷に戻った久城、美しき怪物となったヴィクトリカ
遂に2度目の嵐は訪れ、世界は闇へと向かい、不安と絶望が渦を巻きます。
一弥と瑠璃、ヴィクトリカとグレヴィールが対比になっていて、それぞれのやりとりにそれぞれの思いが出ているのがとても興味深いです。
残念ながらふたりは、あの予言のとおりになってしまったわけですが、ふたりの心が離れないという予言も、そのとおりになるのだと信じたい。
ペンダントと指輪がきっと、お互いをしっかりとつなぎとめてくれることでしょう。


久城の側でも、ヴィクトリカの側でも、大きな動きがあって続きました。最後のあの人の台詞は鳥肌ものでしたね。
波乱は収まるどころか、大きくなる一方ですが、久城にヴィクトリカ、アブリルにセシル先生、みんなが幸せな結末を迎えてくれることを心から祈ります。
最終巻は今月末発売。ああ、待ち遠しい。首を長くして待つことにします。


アニメは一足先に最終回を迎えましたが、あちらも素晴らしい終わり方でした。
原作とはまた異なる展開のようですので、まだ見ていない方にはぜひお勧めしたい。胸がいっぱいになることうけあいです。