まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

GOSICKsⅣ―ゴシックエス・冬のサクリファイス―

  • ストーリー

クリスマス前日、聖マルグリット学園は、“リビング・チェス大会”の準備で騒がしい。
そんな中、ヴィクトリカはいつものように独り読書にいそしんでいた。
ところがそこに、シニョレー警視総監夫人にしてグレヴィールの初恋相手であるジャクリーヌが現れ……。


最後の短編集、になるのでしょうか。短編が5本収録されています。
春夏秋冬の締めということで季節は冬。雪に包まれた学園の描写が綺麗。
今回は珍しく、ヴィクトリカが久城やアブリルに話を聞かせる側にまわってました。
久城はともかく、アブリルともゆっくりお喋りするくらいに仲良くなっていたんですね。柔らかくなったものです。
まだ誰とでもというわけにはいかないけれど、少しずつ他人と接することができるようになってきていて、これも久城のおせっかいの賜物なのかなあなどとニヤニヤしました。


第一話はグレヴィールの髪型が尖ることになったきっかけの事件のお話。
ヴィクトリカには心がないなどと思っているグレヴィールは、まったくどこに目がついているんだと叱咤したくなりますが、それはともかく恋した幼なじみのための献身的な頑張りにはぐっとくるものがあります。
好きな相手が自分以外の男と結婚できるように、髪型を変えてまで事件を解決しようとするとか、なんていじらしいの。
血文字のトリックは自分で試してみて、おお、となりました。これは面白い。


第二話はグレヴィールの部下ふたりが手をつなぐことになったきっかけの事件のお話。
まあそんな事件のことはどうでもよくて(?)、ヴィクトリカの顔を見たとたんににこにこする久城さんがちょっと可愛くて困る。
グレヴィールのヴィクトリカ評をあっさり流して泣き止ませてしまうところは流石ですね。
久城も自覚してきたようだし、ああもう、さっさとくっついてしまえばいいのに。もう最終回目前なんだから、早くしないと間に合わないよ!
あと久城のために窓を開けるときに背伸びをするヴィクトリカににやけます。いちいち可愛いな。


第三話はグレヴィールの人形癖と、ドリル髪型が完成することになったきっかけの事件のお話。書いてて気付きましたけどグレヴィールだらけですね。
上にも書きましたが、アブリルと仲良さげに会話を交わすヴィクトリカが新鮮。
きっと、アブリルのあっけらかんとした性格のおかげでもあるんでしょうね。まあ実際に近くにいたら、多少、めんどうくさい子かもしれませんけども。
アブリルとの別れ際のヴィクトリカはぜひともイラストで見たい! お願いします!


第四話はヴィクトリカが生まれた頃のお話、第五話はこれからの展開を予想させる、少し特殊な掌編でした。
第五話では特にそうですけど、今回は全体的に「次の嵐」に向けて少しずつ波が押し寄せてきているような、意味ありげな描写がそこかしこに散らされていました。
楽しい楽しいクリスマス休暇前、平和に見える学園の裏で、最大の危機がひたひたと迫っています。
この日の翌日はクリスマス。そしてヴィクトリカの……。
久城とヴィクトリカにどのような運命が待ち受けているのか、幸せな終わりを信じて、最終巻を待ちたいと思います。


副題はあれですかね、犠牲になったのはグレヴィールの髪型だとかそういうことですかね。