まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

涼宮ハルヒの驚愕

  • ストーリー

長門が倒れたという報を受け、彼女のアパートに駆けつけたSOS団一同。
SOS団の最終防衛ラインである長門の不調に、戸惑いと苛立ちを隠せないキョン
どうやら不調の原因は、あの宇宙人別バージョン女・周防九曜らしいのだが……。


「分裂」から4年の年月を経て、遂にこの作品が帰ってきました。個人的に何より思い入れの深い作品ですので、なんとも感慨深いものがありますね。
いざページを開いて、あのキョンの独特の語り口が飛び込んできたときには、思わずじんときてしまいました。
小難しい比喩や言い回しを多用するモノローグに、ぐいぐい引っ張られていくこの感覚。やはり面白い。


SOS団と裏SOS団、αとβ、ふたつに分かれてしまった世界。
その理由も明かされぬまま、ふたつの世界は、妙な一致を見せながらも、それぞれ別の物語をたどっていきます。
わりと平和なαに比べ、どんどん不穏な空気が立ち込めてゆくβ。遂には、最強キャラの呼び声高い長門さえも病に伏せってしまいました。
SOS団の影は薄くなり、なんともいけ好かない裏SOS団の印象ばかりが強くなっていく。あるいはこのまま、表と裏が入れ替わってしまうのではないかと不安にさせられます。
そんな時、αの方では予想だにしなかった新キャラ・ヤスミが登場。
変わった能力を持ったわけでもないこの少女が出てきてから、物語はぐんとスピードを上げます。
第九章から最終章への流れにゾクゾク。「分裂」からずっと残されてきた謎の数々が次々に解けていく。
最終章近くまでは大した事件が起こることもなく話が進むので、もしかしたら単調に感じられるかもしれませんが、その分最終章とエピローグでは、溜め込んだものを一気に吐き出すかのような怒涛の展開に手に汗を握りました。
ずいぶん無茶苦茶やっているように見えましたから、これをまとめ切れるのか疑問に思っていたのですけれど、杞憂もいいところでしたね。まさかここまで綺麗に片付けてくれるとは思わなかった。参りました。最高。


キョンの、SOS団への愛がとことん詰め込まれていたように思います。
巻き込まれ型の一般人であったキョンが、ハルヒの消失を経て事件の当事者となり、自分たちの世界を守る側に立って戦っている。胸の熱くなる話ではありませんか。
特にハルヒへの気持ちは、そこかしこで伝わってきます。全くひどいツンデレもいたものですね。まあ、お互い様だけれど。
SOS団ではありませんが、今回の第二のヒロインたる佐々木とのやりとりも素敵でしたね。
お互いを大切に思いながら、距離を保って深入りすることなく、穏やかに語り合う。
男女でありながらどこまでも「親友」ということばの似合う、不思議な関係だと思います。


もちろん、他のキャラたちも、それぞれの活躍を見せています。
古泉は本気で格好良く見えたし、朝比奈さんには久しぶりにあの台詞を決めてくれました。ウインクはいつの間に完璧になったのやら。
驚いたのは意外とくせ者だったらしい国木田です。ただの地味キャラだと思っていたのに……失礼しました。
ああ、我らが団長のことを忘れてはいけませんね。本人は何も知らなくても、やっぱりこのお話の中心は彼女なのですから。
彼女がいるからこそ、こんなにも日常がきらめいて、非日常が際立っている。ハルヒというヒロインが、たぐいまれな魅力を持っているからこそのことだと思います。
終盤の色んな表情のハルヒにはニヤニヤが止まりませんでした。可愛いなあ!


改めて、この作品が大好きだということを再確認。
まだまだ、この先のお話が読みたくて仕方ありません。きっと次も出てくれるんですよね?
ここまで来たらもう急ぎません。慌てず騒がず、続きを楽しみに待っています。


初回限定版の特製小冊子に載っているショートストーリーのイラストが凄い。これは不意打ち。