まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

GOSICKⅦ―ゴシック・薔薇色の人生―

  • ストーリー

父ブロワ侯爵によって首都ソヴレムに召喚されたヴィクトリカ
侯爵から命じられたのは、十年前に起きた、かつての王妃ココ=ローズの首なし死体事件の謎解きだった。
一方、セシル先生の置き手紙に導かれ、ヴィクトリカの後を追ってソヴレムへ向かう一弥だったが……。


アニメに合わせて4年ぶりの書き下ろし新刊だそうです。
最近まとめて読んだ私にはそれほど感慨のようなものはありませんが、それだけの歳月を経ていると思うと、なんとなく文章が今までよりも洗練されているような気がしてきますね。


「第2の嵐」の接近を控え、遂にヴィクトリカとブロワ侯爵が真っ向から対峙します。
ヴィクトリカの運命をねじ曲げ続けた男に対し、どこまでも孤高に、毅然と立ち向かうヴィクトリカがとても格好良いですね。
父の前で弱さを見せることさえ許されない、小さな小さな灰色狼。
そんな彼女の唯一の弱点は、初めてできた大切な友達である、久城一弥です。
今回の事件は、依頼主も、その目論見も、敵に回さなければならないものも、今までとは比べ物にならないほど大きい。
そんな危険な場所に、かけがえのない友人を巻き込みたくなかったヴィクトリカは、関わるなと久城に釘を刺します。
国家を代表して留学してきているという立場を考え、全てから身を引くのか。
危険を承知の上で、どうしても放っておけない小さな友達のそばで、一緒に戦っていくのか。
選択を迫られた久城は、ひとつの道を選び出します。
そこにいたのはもう、帝国軍人の三男を気負った、エリート思考の、国家代表の優等生ではなくて、大切なものを守るために、がむしゃらにまっすぐに突き進む、ひとりの少年でした。
これを成長と呼ぶかどうかは分かりませんが、少なくとも、ずっと格好良くなっていることは確かだと思います。
駄目な部分もたくさんあるけれど、久城一弥はやっぱりヒーローだよ。


終盤の盛り上がりが素晴らしかったですね。
劇場で上演される劇、暴かれていく事件の真相、過去と現在と光と影が入り乱れる、時に幻惑的で時にダイナミックな描写。
あちらこちらに見え隠れする母・コルデリアの影、歴史に隠された秘密、王国の闇。二転三転する真実、そしてどんでん返し。
色んなものがぎゅっと詰め込まれていて、最後までとても面白かったです。
詳しくない私が言うのもなんですが、ミステリーものとして見ても結構楽しく読めるのではないかと思います。


残り短編集1冊、長編1冊で完結予定だそうですね。
いよいよ大きな波が近づきつつありますが、久城とヴィクトリカは、ふたり一緒にこれを乗り切ることができるのでしょうか。
あの不吉な予言が頭をよぎるけれど、このふたりならきっと大丈夫だと信じたい。次も楽しみです。


早くイラスト付きが読みたいなあ。鳩とうさぎ!