まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

狼と香辛料ⅩⅥ 太陽の金貨<下>

  • ストーリー

鉱物商・デバウ商会の治める町レスコで、ホロと共に店を持つことを決めたロレンス。
ところがその矢先、二人はデバウ商会の内部分裂による大きな事件に巻き込まれることとなってしまう。
急いで禁書を得るために、ホロはロレンスを残し、一路キッシェンへと走るのだが……。


長く続いた本作も、遂に本編最終巻を迎えました。
この作品の中で、改めて変わったなあと思うのは、やはりホロとロレンスの間柄です。
初めのうちこそ旅の道連れでしかなかった2人だけれど、いつの間にかお互いが、目的そのものになるほどに、大切になっていた。
商人であるロレンスが、金儲けよりもホロを優先するようになった。
神と人という種族の壁、そして命の時間の壁を感じながらも、ホロはロレンスと一緒にいたいと思うようになった。
それはやっぱり、2人が長い旅を続けてきたからこそのことで、それはさらに言えば、この作品がここまで長く続いたからこそ、これほどに現実味を帯びて感じることができることなのでしょう。
作品の重みというか、歴史というか、そういったものが、2人の間にしっかりと息づいているのだと思います。
いつものことですが、ホロとロレンスのかけあいには確かな愛情が感じられますね。
それでもホロがいきなりあんなことをするとは思いませんでした。なんて愛しい狼なんだろう。頬がとろけそうだ。


最後までとんでもない騒動に巻き込まれ続けるロレンス。
商人の騙し合いのようなことはあまりなかったけれど、その代わりに傭兵の駆け引き、戦い、裏切りなどなど、目まぐるしく変化する展開が連続します。
本当に終わりの方まで先が読めず、何度も手に汗を握りました。
機を見て引くのが良い商人。しかしそれでおとなしく引き下がれないのが人情というもの。そのジレンマが苦しい。
ホロと一緒にいることこそが何よりも大切であることは確かだけれど、それでも他人のために声を張り上げてしまうロレンスはやっぱり格好良いと思います。
これからもホロは、成長しないロレンスに呆れからかいながらも、隣で笑って見守っていくのでしょう。
そしてそれが、何よりもこの2人にぴったりの関係ではないでしょうか。


終わり方もとても素敵でした。
ぱたんと閉じてから表紙と裏表紙を眺めると、思わずにやりとしてしまいます。
やっぱりホロには笑顔が一番似合う。そうですよね。
限られた時間かもしれないけれど、どうか2人、これからも幸せに。


後日談の載った短編集が出るようです。多分最後の1冊になるのでしょう。楽しみに待っています。