まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

ファンダ・メンタ・マウス

ファンダ・メンダ・マウス (このライトノベルがすごい!文庫)

ファンダ・メンダ・マウス (このライトノベルがすごい!文庫)

  • ストーリー

横浜のとある倉庫。そこで1日中AIシステムの誤作動を強制終了させるのが男の仕事だ。
男の名はマウス。彼はそんな自分の生活に十分満足しているのだった。
ところがある日突然、昔の恩人の娘から結婚を迫られてしまい……?


第1回『このライトノベルがすごい!』大賞栗山千明賞受賞作品。
発売前後を問わず色々なところで物議をかもしていたようですが……。
いやあ、悔しいことに面白かったです。


読み始めてまずは主人公の語り口に唖然。そして困惑。
同じ言葉を何度も遣っているし単語はことごとく下品だしで、言ってしまえば汚い口調なのですが、その口調が妙にリズミカルなためつい引き込まれてしまいます。
読み進めるにつれてますますその文章に引っ張られ、いつの間にか読み終わっていました。
決して読みやすくはないのに不思議な魅力が感じられる文章ですね。


主人公のマウスですが、こいつ絶対にイケメンですよね?
絶対にそうだ。自分では醜いとか言ってますが、周りから見たらちょっと厭世的な雰囲気を漂わせたイケメンさんなんですよ。僕の中ではそう決まりました。
とにかく格好良いんです。その口調からはずいぶんかけ離れていますが、彼の行動は格好良い。いや、カッコいい。
母の残した言葉を守り、全てを受け入れようとするその姿。
好きになれない部分も多いし、好きなキャラかと言われればそうではないけれど、やっぱりカッコいいんです。口調とのギャップのせいかなあ。


メインヒロインが誰かは微妙なところですが、なかなか個性と魅力あふれるキャラが揃っています。
マウスに求婚する高校生・まこと。この作品唯一と言ってもいい癒し要因ですね。
まっすぐで友人のために自分を投げ出すことのできる子です。いい子だな。
他にも横浜を取り仕切るグループの娘……ではなく息子・ミチル。弟を溺愛しているマウスの姉・ネーネ。まことの友人・美月。
どのキャラもそれぞれ愉快なプロフィールと性格の持ち主ですが、なんといっても一番可愛いのはAIシステム「くそったれ」でしょう。
困ったことに本当に可愛らしい。なんてこった、機械なのに。
こんなハーレム状態に陥っているマウスですが、本人はそれほど嬉しくなさそうです。うん、そりゃそうですよね。


あとがきがこれまた面白かったです。
編集部も苦労したんですね。その努力に拍手を贈りたい。
この1冊で綺麗にまとまっているというか続けようがないように思えるので多分続刊は出ないでしょうが*1、大間先生の新作が出たらぜひチェックしようと思います。

*1:後日発表されたところによれば続刊が出るそうです。なんてこった。