まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

ゴールデンタイム1 春にしてブラックアウト

  • ストーリー

晴れて大学に合格し上京してきた多田万里。
入学式当日、同じ新入生の柳澤と歩いていた万里は、なにもかもが完璧なお嬢様・加賀香子と衝撃的な出会いを果たす。
幼馴染みの柳澤を追いかけて同じ大学に入学してきたらしいが、柳澤は彼女を疎ましく思っているようで……。


竹宮ゆゆこ先生の新作です。ずいぶん久しぶりのような気がしますね。
高まる期待に見事に応えてくれた1冊だったと思います。面白かった。


最初からあの独特の、妙に生々しい文章が炸裂していて「ああ、竹宮先生だ」としんみりしました。
今回は大学が舞台になっているのですが、大学生のバカバカしい会話やノリが竹宮節によく合っていますね。
お祭り気分で騒ぎまくるサークルや新入生の活気が目に見えるようです。


初めのうちはなんだこの主人公&ヒロインは……と思いましたが、読んでいくうちにどんどん愛着が湧いてきました。
ヒロインの香子は、好きな男=柳澤の前では高飛車で独占欲丸出しの嫌な女なのに、陰で失敗を悔やんで落ち込む不器用なお嬢様です。
この不器用さに心惹かれるといいますか、そりゃ万里じゃなくても気になっちゃうよなあという可愛らしさがありますね。
そんな一番可愛い部分が柳澤には見えないというのがなんともはや、どうにも救えないのですが。
柳澤以外の人間は目に入らない! といった様子の香子が、いくつかの偶然を経て次第に万里と仲良くなっていく様子にニヤニヤします。
自分以外の男に恋する女の子をすぐ近くで見守るという万里の立ち位置が楽しくもあり、ちょっと切なくもあり。


他の登場人物もユニークなキャラぞろいで見ていて飽きません。
特に千波はちょっと卑怯なレベルの可愛さです。柳澤め、いい趣味をしている。
サークルの先輩のリンダはこれから重要なキャラになっていきそうな予感がします。


なんとも続きが気になる終わり方でした。この状態で春まで待たされるのは辛いですね。
個人的には1巻目はしっかりと物語の決着をつけてほしいのですが、まあこれはこれで。


イラストは駒都えーじさん。お嬢様オーラたっぷりの表紙が素敵ですね。
文中のイラストがないのはちょっと残念。