まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

お客様

今回は僕の狭く浅い趣味のひとつであるところのクロースアップマジックについて少し。
なんともマニアックな話題ですし、携帯ブログの方ではほとんど言及してませんが、固定読者もいないこちらのブログでなら構わないかなと思いまして。
一般の方が見ても全く問題のない話題ですし、むしろマジックに詳しい方がご覧になるにはかなり稚拙かと……。


先日大学のマジックサークルの見学に行ってきました。
ここのサークルでは、先輩からトランプマジックを見せてもらい、そのタネを自分で考え、その後答え合わせをして練習に入る、という流れだそうです。
正直言って自分でタネを考えるというのは何も知らない初心者には大変なのではないかと思いますが、まあ悩むのも楽しいですよね。
初回ということで一番簡単なマジックを見せてもらい、タネをちょっと考えてから練習しました。
試しに先輩に見てもらったら、こんなことを言われました。

んー、大体はいいかな。細かいところで言えば言葉遣い?さっき「あなた」って言ったけど(笑)、やっぱりここは「お客様」だよね。

ここでちょっとした違和感。
「お客様」か…。
聞けばこのサークルでは前田知洋さんのようなマジシャンを目標にして活動しているという話でした。
まあ確かに、公式の場で行うときには観客に対してきちんと「お客様」と呼びかけることは基本中の基本といえるでしょう。少しも間違ったことは言っていません。
テレビで見かけるマジシャンの方も必ず「お客様」と呼びかけていますね。
しかし僕個人としては、マジックをそのような公式の場(見知らぬ人の前)で見せるような機会はほとんどないと思いますし、どちらかといえば友人や知り合いに見せて楽しんでもらいたい。
そのとき、相手を「お客様」と呼ぶのは自然なのだろうか。そんな風に考えました。
20世紀を代表するマジシャン、ダイ・ヴァーノンの有名な言葉に、

Be natural.

というものがあります。日本語訳では「自然であれ」。
少しでもマジックに興味があれば聞いたことがあるだろうというくらい有名な言葉なのですが、ここにおける「自然」というのは、「自分らしい」ということです。
よく、マジックを始めるといきなり言動が丁寧になる人がいます。
これはもう、その人を普段から知る人からしてみれば明らかに「不自然」です。
言動を丁寧にすること自体は悪いことではありません。僕もマジックをするときには丁寧語になります。相手が家族であってもです。
しかし、その丁寧さ加減が「自分らしくない」レベルにまでなってしまうと、やはり見る方はどこか気持ち悪い感覚を持たずにはいられません。
また、無理に「自分らしくない」言動を作ろうとすると、初めて会った人にもどこか不自然さを与えてしまうものです。
前田さんをはじめとするトップマジシャンの方々は、長年マジックを演じて来たなかで「お客様」という言葉を自然に身に付けられたのだと思います。
僕はマジックについて素人に毛が生えたようなものでしかありませんし、まだ「お客様」という言葉を使うのには抵抗があります。
使わなければ身につかないわけですし、練習という意味で使っていくことももちろん必要だとは思いますが、今はまだ「あなた」という言葉を使ってマジックを演じたい。
それに、無理に言葉遣いに気を取られすぎて手元の注意が疎かになっては元も子もない。
ですから僕は、少なくとも友人にマジックを見せるときは、これからも「あなた」という言葉を使っていくつもりです。
マジックサークル参加中は「お客様」を使うように心がけましょう。いつかこの言葉が身に付くことを願って。