まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『千歳くんはラムネ瓶のなか』感想

千歳くんはラムネ瓶のなか (ガガガ文庫)

ストーリー
「五組の千歳朔はヤリチン糞野郎」――学校裏サイトで叩かれながらも、藤志高校のトップカーストに君臨するリア充・千歳朔。彼のまわりには、外見も中身も優れた友人たちがいつも集まっている。圧倒的姫オーラの正妻ポジション・柊夕湖、努力型の後天的リア充・内田優空、バスケ部エースの元気娘・青海陽……。仲間たちと楽しく新クラスをスタートさせたのも束の間、朔はとある引きこもり生徒の更生を頼まれる。これは、彼のリア充ハーレム物語か、それとも――? 新時代を告げる“リア充側”青春ラブコメ、ここに堂々開幕!!

最強リア充によるリア充指南
第13回小学館ライトノベル大賞<優秀賞>受賞作品。
学園のトップカーストにしてハイパーリア充な主人公が、そのリア充パワーで不登校の非リア充生徒を引っ張り出し変身させていくリア充×青春学園ブコメディ。
主人公がリア充サイドということで発売前から話題だった今作。期待に劣らぬ面白さでした。が、1巻時点でいうと「リア充による非リア充育成物語」としての側面が大きく、「リア充のラブコメ」という要素は薄めだったかな。
主人公よりも彼に救われる非リア充くんの方に感情移入してしまったのだけど、さもあらん。でも非リア充視点から「このリア充主人公かっけーな!」っていう読み方も、それはそれで正しい楽しみ方のような気がします。


学園一の超リア充・千歳。顔よし性格よし成績よしスポーツ万能ノリもよくて下ネタもいけるパーフェクトマン。当然激モテ。彼の周りに集まるメンバーも当然、男女問わずカーストトップのリア充たち。進級早々クラスに集まってワイワイイチャイチャしちゃったりして、かーっ! むかつくね!!
そんな千歳が担任教師から頼まれて不登校の男子生徒・山崎の自宅へ突撃するところから物語は動き出します。
いやあ、正直ね。僕のような非リア充からすると、やっぱり千歳みたいな人間って嫌味に見えるわけですよね。山崎は卑屈だし身勝手だしリア充のことを一方的に敵視しているだけのチンケな残念ボーイだけれども、僕にもそういうところはあります。もし自分が引きこもっていたとして千歳みたいな奴が女連れで呼び戻しにきたらそりゃキレる。僕もキレる。
でもそんな非リア充が精一杯築き上げた壁をフルパワーでぶっ壊しにくるとんでもない奴もいる。スーパーリア充にしてスーパーヒーロー。千歳はそんな主人公である。
あと一緒に説得にやってきた夕湖(ヒロイン)ですけど、男に対する距離感が普通に近すぎてそりゃ勘違いされるよなと思いました・・・・・・。


千歳の指導の下、着実に非リア充の世界からリア充の世界へと足を踏み入れていく山崎。
ていうかリア充たちみんないい奴ー! 会話のノリとか見てるとやっぱ違う生物だわとも思うけど人格的にはちゃんといい奴ー!
そして何より、山崎の素直さが美徳。あれだけリア充に偏見を持っていて、そいつからの指導や指摘をこんなに素直に聞くことなんて普通はできませんわ。
千歳の誘導と自分の努力で、少しずつリア充の輪になじんでいく山崎の姿が眩しい。一歩踏み出そうとするかしないか、結局はそこの違いだったりするんだよなあ。
頑張って頑張って、でも届ききらなくて。そこで颯爽と現れる我らがリア充のヒーローっぷりがエグい。心情的には好きになれない部分もいっぱいある主人公ですが、めちゃくちゃ格好良いことだけは認めねばなるまい。
さて、ということで1巻は完全に山崎くんのお話だったけれど、では千歳の方はどうなのか?
リア充なりの苦悩のようなものも多少描かれていたようには思いますけど、まだ本格的に語られてはおらず、またラブコメに至っては始まってすらいない状況ですから、物語の本番はここからのはず。
リア充の世界のラブコメがぜひ見たいので、そちらの方面に期待しておきます。リア充街道を駆け上がった山崎と夕湖とで三角関係になったりしてほしい。もしくはクラスメイト全員振って明日姉に告るんだけどこっぴどく振られたりしてほしい。妄想が捗るな・・・・・・。


イラストはraemzさん。この表紙の夕湖はちょっと魅力的すぎて困りますね・・・・・・。
どうしても胸元にばかり目が行ってしまうのは許してほしい。


やー、このタイトルは天才的にエモいよね。

『傀儡のマトリョーシカ Her Nesting Dools』感想

傀儡のマトリョーシカ Her Nesting Dolls (講談社ラノベ文庫)

ストーリー
文芸部の阿喰有史はある使命を受け、友人(部員)を集めていた。勧誘対象の一人、雑賀更紗がいじめをうけているとの情報を得る。半ば強引に雑賀を入部させ、他の部員達の協力のもと、いじめの犯人を捕まえることに成功。だがその犯人はカースト上位の池永の命令で雑賀への嫌がらせをしていたという。池永に会いに行くと、彼女もまた何者かに脅されていた。脅迫の連鎖はさらに続き、首謀者の影も見つけられない。そんな頃、文芸部員宛に「捜査を止めなければきみたちの秘密をバラす」という不審なメールが届く。脅迫するに足る秘密を、犯人はどう入手しているのか? そしてその脅迫に隠された真の目的とは!? 事件の結末に驚愕する学園ライトミステリー!

真犯人は別にいる
ニコ生配信で視聴者の方からオススメいただいて読みました。第7回ラノベチャレンジカップ<佳作>受賞作品。
感情の希薄な少年が学校内でのいじめ事件をきっかけに次々と新たな謎と対面して、思わぬ真相へと辿り着いていく学園ミステリー。
うむうむ、良かったです。伏線の散りばめと回収がばっちり決まっていて唸らされました。
他人とは違う物差しを持った主人公の独特な価値観からくるユニークな会話劇が素晴らしいですね。センスを感じる1冊でした。


入院している姉の学内復帰の場所として文芸部への部員勧誘に励む少年・阿喰。勧誘活動の中、学年一の美少女・雑賀がいじめられているため、調査してほしいという依頼を受ける。
どうやら犯人らしき人物を確保したものの、その犯人は別の人物からの指令で動いていただけだった……。
いじめの犯人を探して見つけたと思ったら、また新たな真犯人が登場する入れ子方式のミステリー。なるほど、それでこのタイトルですか。
あらすじにライトミステリーとあったので謎解き要素は薄めなのかなとも思っていたのですが、個人的な感覚だと結構しっかりミステリーしてたように思います。
上にも書きましたが、伏線の張り方がいい。分かりやすすぎるわけでもなく、気付かないほどでもなく、ちょっと「あれ?」と引っかかるヒントがいくつもあって、僕のようなザコミステリー読みにはちょうど好みの具合でした。気付けると嬉しいしね。


主人公の阿喰は一般的な高校生とはだいぶズレた思考の持ち主です。空気を読めないというか読まないというか、自分に正直というか、端的に言えば変人というやつですね。
そんな彼から発されるセリフの数々は、言葉選びが独特でとても愉快。特に雑賀との間の漫才のような掛け合いがとても楽しい。
ある意味作中で一番の謎が阿喰で、感情の薄い彼の気持ちがどのように動いていくかというのが、この作品の第二のテーマなのかなとも思います。
なかなかショッキングな展開もありつつ、彼らなりの青春を感じる良いラストシーンでした。続編があるようには思えませんが、もしあるのならぜひ読みたいです。


イラストは山代政一さん。表紙力が高すぎる。めちゃくちゃお洒落じゃないですか……。
本文中のイラストもどれも雰囲気が出ていて最高でした。


39ページの「不思議」、読み終わってしばらく考えてからようやく真相に気付いたのだけど、思わず膝を打ったよね。

『スキルが強すぎてヒロインになれません』感想

スキルが強すぎてヒロインになれません (アイリスNEO)

ストーリー
クラスメイトの高遠くんに片思いをしている女子高生のアリアは、今日もいつも通り部活で活躍する彼を遠くから見守るはずだった。ところが、彼女は目撃してしまった――彼が勇者として異世界に召喚されそうになっているところを!? とっさに追いかけたアリアは、神様の恩情で勇者のおまけとしてついていけることになったけれど……。神様がくれた「人類にできることは何でもできる力」が強すぎて、可愛さもモテる要素もないんですけど!? 恋する乙女なのにヒロイン感0な少女のスキル無双異世界召喚ラブファンタジー

脳筋ヒロインが守ってあげる
Twitterでみかこさん(みかこ (@haretarabook) | Twitter)が絶賛されていたので読みました。第1回アイリスNEOファンタジー大賞<銀賞>受賞作品とのこと(今知った)。
片思いのイケメン男子の後を追っかけて異世界に召喚された天然パワフル少女が、与えられた万能スキルを隠しながら想い人とともに冒険の旅に出るラブコメファンタジー
彼の前ではか弱い系ヒロインでありたいのに、ついつい腕力と勢いで突き進んでしまう脳筋な主人公が見ていてとても気持ちいい!
基本アホの子なので単純にコメディとしても面白く、笑いながら楽しく読めました。


学園一のイケメン・高遠くんに片思いをしているアリアは、ある日の放課後、彼が勇者として異世界に召喚されているところを目撃し、彼の後を追って勢いで召喚ゲートに飛び込んでしまう!
ということで主人公のアリアさん、いい子でまっすぐなんだけれども何かと不器用で脳筋で常人とはだいぶ思考がズレている……端的に言えばアホの子ヒロインです。
とにかく彼女の言動が楽しいんだ! 高遠くんを神聖視しすぎるあまり拝みだしてしまったり、お互いを尊重しすぎるあまりに高遠くんと野宿争奪バトルをおっぱじめようとしたりと、理屈をどっかにぶっ飛ばしている感じの突飛さで最高。変わっているけれども根底にはしっかりと「高遠くん好き好きー!」という固い想いがあるからとても分かりやすいし、可愛らしさと強さを両方備えた主人公ですね。
そんな彼女のスキルはギネスブック由来のもの。人類の限界の力をいつでも引き出せるのでチンピラも余裕でぶん投げられるゴリラ系。でも高遠くんにはそんな姿見せられない! とスキルをひた隠しにしつつ陰から高遠くんの冒険を手助けしようとする必殺仕事人ぶりが熱い(笑)。


一方の高遠くんはといえば、一言で言えば王子様な感じのザ・イケメン君という感じ。文武両道でなんでもできるオールマイティプレーヤー、しかもめっちゃ優しい紳士……と文句の付けようもないんだけれど、アリアと一緒にいるうちに次第に毒されて(?)ダブルボケみたいになっていくのが愉快。
最初から明確に高遠くんラヴなアリアとは違って、最初はクラスメイトの女の子という印象だけだったと思うのだけれど、旅の中でだんだんアリアへの想いが芽生えていって他の男への嫉妬とかが生まれてきちゃったりしていて微笑ましい。そしてそんな彼の気持ちに全く気付かないアリアさん、マジおバカさん……。
異世界の騎士たちや召喚された他の勇者たちとともに魔族と戦って、旅路はおよそ半分くらい? アリアと高遠くんのちぐはぐな両思いがどんな風に進んでいくのか、なろうの方では完結しているみたいですがやっぱり本で読みたいのでぜひとも続刊を!


イラストはhi8mugiさん。まず表紙が最高でしょ。アリアさんアリアさん。それ熊。思いっきり首絞めてるそれ熊ですから。
僕はチョロいオタクなんでマヤちゃんのデザインが好みですね……すみません……。


イケメンを円盤投げ系女子。これは流行る(流行らない)。