まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『所持金ゼロの彼が資産家令嬢から求められるようになった理由』感想

所持金ゼロの彼が資産家令嬢から求められるようになった理由 (角川スニーカー文庫)

ストーリー
貧乏生活を送る高校生・天満清太郎が出会ったのはお金持ちJKの美少女探偵!? ひょんなことから美少女の助手となった清太郎は、彼女のお屋敷に居候することに。お嬢様と一つ屋根の下、二人の仲は急接近していくかと思いきや――彼女が求めているのは、彼の貧乏に隠された力だった!? しかし二人で事件を追ううちに、いつしか清太郎自身もお嬢様から求められていくようになって――!
「アンタの貧乏全部ひっくるめて、好きよ、清太郎!」
所持金ゼロの高校生が資産家令嬢に愛されまくる! 貧乏を幸せに変えていく新感覚の身分差ラブコメディ!

第24回スニーカー大賞<金賞>受賞作品。
貧乏神と共に暮らす少年が美少女霊視探偵と出会い、彼女の助手として街の事件を解決していく異能ラブコメ
主人公を強引に引っ張っていくタイプのヒロインと、実はヒロインよりも遥かに変人なハイスペック貧乏性主人公のコンビが面白い。
主人公の思考があまりにトリッキーすぎて時々ついていけなくなるのですが、代わりに別の語り手を用意しているあたりが上手いなと思いました。


生まれた時から貧乏神・恵拏俚と一緒にいたために、貧乏でいることを当たり前に受け入れつつも幸せに暮らす高校生・清太郎。勤労少年だし誠実で優しいし抜群の身体能力も持ったスーパーハイスペック主人公なのだけど、金銭に対する価値観だけが世間と致命的にずれている……。
ヒロイン・叶絵は、高校1年生にして現役霊視探偵という才能の持ち主であり、そのことを自負している少女。一方、強気な態度の裏で必死で背伸びしているところなんかも透けて見えていて、力になってあげたくなるタイプの女の子ですね。やー、正直好みのヒロインです。年下×ツン×お嬢様、素晴らしい。
こういうタイプのボーイミーツガールって突飛なヒロインに凡人の俺が連れ回されるっていうのが定番だけれども、異能持ち・探偵・強気な年下お嬢様と要素モリモリにしてもなお、主人公の濃さの方が勝ってしまうな……。なんちゅー主人公じゃ。
そして主な語り手の恵拏俚。貧乏神でも心の底から清太郎の幸せを願ういいやつなんですわ。古めかしい語り口に少しとっつきにくさも感じますが、これはこれで味かな。
清太郎と叶絵だけだと話が全然進まないことも多いので、恵拏俚がいい具合の潤滑剤として働いてくれていますね。まあ彼女もわりとボケ寄りなので、叶絵のツッコミの仕事は増えてますが……(なお大抵ボケに負けている様子)。


叶絵や恵拏俚とともに貧乏日常コメディをやっていたら、いつの間にか大きな事件が舞い込んできて。
事件解決に向けて動く中、叶絵が弱い部分を表に出したり、清太郎の気持ちが動いていったりと、一緒に行動するうちに二人の関係性が少しずつ変わっていくのが見えてきたのが良かったです。
それにしても、最後にここまで動くとは思わなかったけれど! 清太郎、なかなかどうしてやる時はやる男よ……。叶絵のお返しもお返しだけどな! 恵拏俚はよく平然と見ていられますね! 僕が貧乏神だったらニヤケを抑えられませんわー!
「スタートライン」に立った二人が、今後どんな風に歴史を重ねていくのか。ぜひ見てみたいものです。


イラストはNardackさん。いつもながら素晴らしい表紙力ですぞー!
あとベッドでぜんざいを飲む叶絵がかわいい。


茉莉亜の圧倒的天使ぶりに目が潰れそうです。

『中ボスさんレベル99、最強の部下たちとともに二週目突入!』感想

中ボスさんレベル99、最強の部下たちとともに二周目突入! (角川スニーカー文庫)

ストーリー
最低ランクの小規模ダンジョンを、わずか1年で中堅冒険者パーティですら退ける大迷宮へと作り替えた中ボス・“千手”のナルゴア。しかし魔王を倒した最強クラスの勇者一行が襲来、愛すべき従業員たちを守るため、ひとり勇者に挑み敗れ――どういうわけか文明の衰退した100年後の世界に、しかも人間として転生する! 召喚術師の少年となり、あまたの魔法を操る“千手”と、いまや伝説級となった部下たちを召喚したナルゴアは、魔王軍再建のため、各地のダンジョンを改革していく!
「勇者の生まれ変わりなんかじゃない――俺は、中ボスさんだ」
中間管理職と頼れる部下たちの、壮快リビルドファンタジー

有能な中ボスながら勇者パーティに敗れた主人公が人間の少年に転生、かつての部下たちとともに再出発を目指すダンジョン運営ファンタジー
かつて主人公が面倒を見た部下の魔物たちが、100年の間に大きく成長を遂げて今度は主人公の力になってくれる展開が熱くていいですね。
あとアルラウネちゃんがかわいいのとアルラウネちゃんの詠唱がかっこいい。とにかくアルラウネちゃんがいい。


ずさんな管理で荒れ果てていた小規模ダンジョン「しじまの洞窟」を、着任から1年で立派な大迷宮へと押し上げた凄腕の中ボス・ナルゴア。
しかし彼は、突如やってきた勇者パーティと対峙して敗れ、100年後の人間の少年として転生してしまう!
10歳まで泣き虫少年として育ちながら、前世の記憶に目覚めた途端に森の魔物に説教かましていく少年ナルゴアの変貌ぶりにニヤリ。オウルベアもオールドボアも魔物ながらいいキャラしとるわ。
何より、100年前にダンジョンとともに残してきたかつての部下たちとの再会が胸アツ。
えーなに、アルラウネちゃんったらナルゴアのこと好きすぎじゃない? 素直じゃないのに気持ち丸わかりなアルラウネたそ……。これもうバージンロードまっしぐらじゃない?


少年の身体ながら、かつての力の一部と、なにより卓越したダンジョン運営能力は健在。
かつての古巣のごとく、残念ダンジョンに工夫を凝らしてハイレベル冒険者を追いやったり、因果にも同時期に転生した勇者との不利すぎる決戦に挑んだり。
自分の力だけではなく、仲間たち皆の力を結集して敵に挑んでいく中ボスならではの戦い方が楽しいです。
バトルシーンもわりとコメディタッチなのも読みやすくて好み。部下たちとの合流を果たしたナルゴアがこれからどんな中ボス道を歩んでいくのか、続きに期待。


イラストは天瀬晴之さん。ゴブリン亭で飲み明かす幹部3人のイラストがお気に入りです。ほっこり。
コミカライズも担当されるとのことでそちらも楽しみですね。


地味に一番やべぇやつ、きゅーちゃんだなこれ。

『賢勇者シコルスキ・ジーライフの大いなる探求 ~愛弟子サヨナのわくわく冒険ランド~』感想

賢勇者シコルスキ・ジーライフの大いなる探求 ~愛弟子サヨナのわくわく冒険ランド~ (電撃文庫)

ストーリー
「ところでコレ、ホントに出版するの?」
編集長の鋭い眼光とその言葉に、担当編集の命は風前の灯火であった。
本作は『賢者にして勇者である最強の称号《賢勇者》を持つ男が、弟子(おっとり巨乳美少女)とともに社会の裏に隠れた悪を断罪する』という“ザ・今時のライトノベル作品”としてスタートした。だが作家からあがってきた原稿は、全裸のイケメン(賢勇者)をはじめ、筆舌に尽くしがたい変態仲間たちが織りなすナンセンスギャグギガ盛りの――いわば「なぜか堂々としている社会悪」的な何かであったのだ(ついでにヒロインの胸も削られていた)。
「だ、出版(だ)します! 面白いですから!」
超言い訳っぽい担当の言葉は真実か!?  答えは――今、あなたの手の中にある。

これはひどい(それしか言えない)
「なんだかやべぇ新作が電撃から出るらしいぞ」そんな雰囲気が、すっかりラノベに対するアンテナが低くなってしまった僕のタイムラインからも読み取れるほどにTwitterがざわついていたので読んでみました。
物語の中身がまるで見えない「外し」系のあらすじってやつ、まあ嫌いじゃないんですけど、「ふぅん? そういう方向性で来るんだ? でもこんだけ吹っかけてくるってことは当然それだけのモノが読めるんでしょうね?(威圧)」って感じで斜に構えてしまって、どうしてもハードルが高くなってしまいがちなんですが……。
安心してくれ。コレは僕の想定を超えるアホギャグだった。そら編集者もマトモにあらすじ書けんわな(納得)。


魔物ひしめく森の奥深く、人里離れた奥地に住まう「賢勇者」シコルスキと、彼の唯一無二の弟子サヨナ。
これはそんな二人が、賢勇者の力を求めて日に日にやってくる一風変わった客人の頼みを聞いていくお助け日常ファンタジー(ただし登場人物が全員ド変態の)である!
……それなりにハイファンタジーっぽい雰囲気を出してきたのが出だし2ページしかなかったぞ。どうなってんのマジで。あとなんで誰かしら(主に男が)脱いでんの。
変人と奇人と変態ひしめく中に唯一人存在するツッコミ役サヨナが救いすぎる。これサヨナが弟子入りする前はどんなカオス世界だったんだ。ただボケればいいってもんじゃないんですよ!
ギャグのセンスはかなり高い……んじゃないかな。うん。たぶん。いや正直この本のギャグでめっちゃ笑ったー! とか言うのすごい恥ずかしいんですけど、実際笑っちゃったから仕方ないわ。ほんっっとにしょうもないんだけど。そのしょうもなさが最高。これは乾いた毎日に疲れ切った現代人へのポーションとなれる存在かもしれないゾ(適当)。


中身について触れようと思うと大半シモネタかセクハラか著作権にひっかかってしまいそうなのだが、とりあえずサヨナはかわいい。胸部が切ないところもかわいい。というかこのヒロイン、ヒロインなのに貧の乳をいじられすぎである。もはやほぼ全キャラにいじられているどころか、いじられすぎて自分でもいじっちゃってる。不憫。そこがかわいい。
個人的に好きなのは第四話。いやほんとこれ大丈夫なの? 快○天の表紙がイラスト上に載ってるライトノベルなんて見たことないんですけど? 作中では伏せ字すらなくて作者の気概を感じた。まあそういうお話である。
好きなサヨナのツッコミでいうと第五話より「死のラノベ破壊ウイルスですよ!!」ですかね。遊○王が好きなんだな(作者が)ってことはなんとなく伝わったよ。
そしてKADOKAWAの扱いだけはガチでアレすぎて凄い。作者も編集も一体なにと戦っているの? その勇気と覚悟と元気と本気、もうちょっと他に使い所があったんじゃない?
続きが出るのか出ないのか、出たところで別に読まなくてもいい感は凄いんだけれども、でもきっと読むんだろうな。そう、僕もまた、乾いた毎日に疲れ切った一人の大人だから……。


イラストはかれいさん。この本、イラストだけが癒やし的なところがあります。サヨナはかわいいなあ。
表紙の差分になっている扉絵のひどさに今気付いて鼻水でた。


なぜだか知らないが電撃文庫編集部の住所を覚えてしまったなあ。なぜだか知らないが。