まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『王女殿下はお怒りのようです 1.転生王女と古の力』感想

王女殿下はお怒りのようです 1.転生王女と古の力 (オーバーラップ文庫)

ストーリー
王女であり最強の魔術師のレティシエルは、戦争によって命を落とし、千年後の世界へと転生した。彼女は魔力がないため周囲から無能令嬢扱いされるが、レティシエルの“魔術”は使えて拍子抜け。その後学園でレティシエルは、千年後の“魔術”を目の当たりにし――そのお粗末さに激怒した! 我慢ならないレティシエルが見せた“魔術”は学園を震撼させ、やがて国王の知るところとなるが、レティシエルは“魔術”の研究に夢中で全く気付かず――!? 前世の伴侶によく似た少年・ジークと落ちこぼれの令嬢・ミランダレットを巻き込んで、生まれ変わった王女殿下は我が道を突き進む! 常識外れの最強魔術譚、開幕!!

最強魔術師の王女が、まともに魔法を使えない貴族の令嬢として千年後の世界に転生!
千年前の「魔術」と現代の「魔法」との違いに困惑しつつも、その圧倒的な魔術の力量を披露していくにつれて、元々の彼女を馬鹿にしていた周囲の人々の視線が変わっていく展開が痛快なファンタジー作品でした。
web版もチラッと見てみたのですが、かなり大規模に加筆修正がかかっているみたいですね。個人的にはファンタジー分が多い書籍版の方が好みかな。


戦争で命を落とした千年前の天才魔術師にして王女・レティシエル。そんな彼女が転生したのは、魔力がないばかりに家族や学園の人々から侮られ、小馬鹿にされている不遇の公爵家令嬢・ドロッセル
しかしドロッセルが使えないのは自らの魔力を元に行使する「魔法」であって、周囲の魔素を利用する「魔術」は千年後の世界では既に失われた技術(らしい)のであった!
「魔法」と「魔術」は別モノで~、というファンタジー、最近ちょくちょく見かけるような気がしますね。失われた技術の知識を持った主人公が遥か未来の世界で無双する、というのも、まあベタといえばベタではある。
しかし転生した先の、元々の体の持ち主が無能な落ちこぼれで、そんな自分への不躾な視線を次々に塗り替えていくというのが爽快なお話でした。少女主人公の魔法ファンタジーというのも(こちらも最近増えてきたとはいえ)なかなかレアでおいしい。


レティシエルは王女だったということもあって飄々としていてかっこいい少女ですね。ドロッセルだった頃との差とか何も考えずに自由に振る舞う彼女に周りの人々が振り回されていくのが愉快です。
新たにできた友人・ミランダレットと次第に親交を育んでいくのがなんだかほっこりできていい。一方、前世での配偶者にそっくりな謎の少年ジークとは、恐らく恋愛関係になっていくのだと思われますが……今のところはまだそこまで、というところでしょうか。いかんせん、レティシエルは1人でなんでもできてしまいそうなところがあるので、彼女の恋人というものはあんまり想像できないのですが。
個人的には、レティシエルを目の敵にする婚約者の王子と、その恋人にしてレティシエルの妹という修羅場まっしぐらなカップルが結構好きです(笑)。小物臭たっぷりの王子も、表面上姉思いだけれど実は腹黒な妹も、やられ役として非常にいい味出していますね。本性を現した妹との対峙が楽しみなところ。
あと気になるのは、元のドロッセルの人格がどこへ消えてしまったのかという点でしょうか。何かと不憫な女の子であったらしいので、どうにか救われてほしいのですが……。ともあれ、続刊に期待です。


イラストは凪白みとさん。銀髪オッドアイ美少女は最強。知ってる。
あといかにも腹に一物抱えてます感のある妹ちゃんの笑顔が好き(笑)。


転生ものを読むと転生前の方の話を読みたくなってしまうの、我ながら悪い癖だと思います。

『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか14』感想

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか14 (GA文庫)

ストーリー
「迷宮の孤王――アンフィス・バエナ!」
絶望の『予言』は終わらない。惨禍の宴が繰り広げられた27階層で巻き起こる新たな異常事態。退路を断たれたリリ達は、ベル不在の中で『冒険』を余儀なくされる。
「深層……」
一方でベルとリューを待ち受ける過酷の名は『37階層』。孤独、孤立、孤絶、最凶の舞台で幕を開ける最悪の決死行。そして迫りくる【厄災】の影。かつてない過酷に翻弄される中、リューは生と死の狭間で過去の情景を見る。
「私には、もう……『正義』はない」
これは少年が歩み、女神が記す、 ──【眷族の物語】──

600ページ続くクライマックス
半端ねええええ! 600ページオーバーの分厚さに狂喜乱舞して読み始めてみたら、最初から最後まで冒険に次ぐ冒険、危機に次ぐ危機、ページをめくってもめくってもクライマックス級の熱い場面しか出てこないという、ちょっと頭おかしいんじゃないのというレベルでとんでもない1冊でした。
特に、深層に落ちたベルとリューの追い詰められ具合が凄い。何度命の危険に晒されれば気が済むんだ……作者ドSすぎるでしょ……。
それにしても今回のリューのヒロインっぷりは凄かったですね! ベル君包囲網への参戦なるか!?


ベル不在の中、イレギュラーで出現した『迷宮の孤王』。Lv.4のアイシャがいるとはいえ、今のヘスティア・ファミリアの戦力では到底太刀打ちできるはずのない大敵。
しかしそこで諦めない男がいた。ベル・クラネルに負けるな。その思いで立ち上がる者たちがいた。
全員が死力を尽くした、薄氷を踏むような、本当にギリギリの戦い。これは間違いなく、ベルがかつて乗り越えてきたのと同じたぐいの「冒険」だ。彼らのこの姿を見れば、もはや誰も、ベルだけで保っているファミリアだなんて言えなくなるに違いない。それほどに……いつの間にか……彼ら彼女らも成長していたんだなあ。
特級の窮地を脱して、それだけに飽き足らず、ベルを救出すべく階層を降りようと決断する一同。
その中で新たに芽吹いた、ヴェルフのちから。同じ前衛職として、今までどうしてもベルの影に隠れがちだったヴェルフだけれど、彼は彼でとんでもない冒険者になろうとしているのかもしれない。


一方、ただでさえボロボロの体で、深層37階層まで落ちてしまったベルとリュー。当然地図もなく、ろくな装備すらない。えっ、これってもはや詰みなのでは……? というような状況。いかにベルとリューが優秀な冒険者であるとはいえ……。
まさに一寸先は闇。2人揃って生還できる気配など微塵もなくて、辛く苦しく痛ましく、当て所ない冒険が続きます。ベルは毎度毎度ピンチに陥るけれども、まず間違いなく過去最大のピンチですわ。ほんと、今回ばかりはマジで無理なんじゃないかって思いました。
自分の身を犠牲にしてベルを生還させようとする、自罰的なリューの振る舞いがまた切ない。もちろん、今の状況があまりに厳しいと分かっているからこその、リアリストとしての決断でもあるのです。一流の冒険者としては、もしかしたら当たり前のことなのかもしれない。しかし彼女の隣にいるのは、冒険者の当たり前を片っ端から否定して回る、周囲の全てを救わなければ気が済まない小さな英雄!
そう、あのベル君が、リューさんを見捨てて1人だけ助かるなんてこと、できるはずない。相変わらずとんでもない無茶をしでかしてくれて、もう肝が冷えるったらないんだけれど、でもベルはやっぱりこうでなくっちゃなあ。カッコ良すぎる。
エピローグ、完全にリューがメインヒロインと化していましたね……さもありなんというところです。アイズ過激派の僕もついうっかりグラつきそうになりました。
まだまだ続きそうなベル君のモテ期は、いったいどこに着地するのやら。次巻は日常編ということで、ラブでコメなあれこれも見たいですね。


しかしベル君、またレベルアップしてしまうのでは……?

『死神に育てられた少女は漆黒の剣を胸に抱くII』感想

死神に育てられた少女は漆黒の剣を胸に抱くII (オーバーラップ文庫)

ストーリー
死神から授かった漆黒の剣を手に戦場を駆け、ファーネスト王国の南方戦線へと勝利をもたらした銀髪の少女・オリビア。久方ぶりの勝利に浮かれる王国だったが、間を置かずして舞い込んだのは、北方戦線を維持していた第三軍、第四軍が壊滅したとの報だった。状況を打破すべく、オリビアを有する第七軍は制圧された地域奪還の命を受け、北方戦線へと進軍を開始する。一方、帝国軍の指揮を執るのは、帝国三将が一人にして紅の騎士団を率いるローゼンマリー。濃霧が覆う渓谷で、戦いの火蓋が切られようとしていた――! 王国軍“最強の駒”として、常識知らずの無垢な少女が戦場を駆ける、第二幕!

銀麗の少女、帝国騎士団を蹂躙する
去年読んだ中でもトップクラスに好みだった作品である無双戦記ファンタジー、待ちに待った第2弾! いやあ、ほんと待ちましたー! 普段web版は読まない僕がうっかり全部続きを読んじゃうくらいにハマってしまったのに、次の巻の情報が出ないところかweb版の更新まで止まっちゃったもんだから、正直めちゃくちゃ心配してました!
今回は帝国が誇る紅の騎士団との戦いを描くのですが、相手が誰であろうと最強の少女オリビアの無双ぶりは健在。鎧袖一触とはまさにこのことといった風情で、ここまで圧倒的だとただただ痛快です。脇を固めるクラウディアとアシュトンの奮戦ぶりもとても良いですね。


南の帝国軍を足止めした第七軍は一路、紅の騎士団が攻め寄せる王国北方へ。
通りがかったついでに……とばかりに、中央戦線で窮地に陥っていた第六軍もさくっと救ってしまう。いやはや、この無敵感。たまらんものがありますね。
ここまで圧勝に次ぐ圧勝を見せられると、だんだん面白みが薄れてきてもおかしくないと思うのだけど、なぜかずっと楽しいんだなあ。不思議だなあ。まあオリビアのキャラ造形が好きすぎるので、多分にひいき目は入ってると思うんですけれども……。それにしたって、お話の勢いを止めずにずっと駆け抜けていくこのスピード感はなかなかに凄い。
戦場では化け物であり死神であるのに、一歩その場を離れると途端に無邪気で愛らしい少女と化してしまうのがずるいですよね。日常パートで激怒するクラウディアと、彼女の夜叉ぶりに戦々恐々とするオリビア、という力関係の逆転した構図が大好きなんです。


王国北方で大規模展開する紅の騎士団をじわじわと突き崩していくアシュトンの策謀。いやまったく頼りになる軍師である。
最強の剣と異才の頭脳がいて、優秀な補佐官がその2人をまとめ上げる。やはりこの独立騎兵連隊、そんじょそこらの軍では太刀打ちできないのでは?
紅の騎士団の将・ローゼンマリーもなかなかの使い手のようでしたが、正直彼女がオリビアに勝つ未来が見えなかったというか……。もしもオリビアが本気を出せるとしたら、今のところは蒼の騎士団を相手にした時くらいかなという気がしているのですが、この帝国最強軍とオリビア達が対峙するのはいつなのでしょうね。
もしくは、ラストで登場した神国メキアから、思わぬ強敵が登場してきたりもするのでしょうか。ともあれ次巻も楽しみです。


web版を読んだはずなのにかなり新鮮な気持ちで読めたのだけど、これは加筆修正が多いからなのか、僕の記憶力がないせいなのか(たぶん両方です)。