まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『ロクでなし魔術講師と禁忌教典13』感想

ロクでなし魔術講師と禁忌教典13 (ファンタジア文庫)

ストーリー
それは突然にやってきた。後期学期がスタートし、学院が浮き足立つ中、リィエルが教室で倒れてしまう。病名、『エーテル乖離症』――。『Project:Revive Life』の産物であるリィエルに訪れた寿命。その治療のため、方々手を尽くして残った一縷の望みは、特務分室の持つ極秘資料だが――。新室長・サイラス=シュマッハから交換条件として言い渡されたのは、女王陛下暗殺を企てた逆賊アルベルトの討伐で!? 「外道に堕ちたってんなら……やつをぶん殴るのは俺の役目だ」その偶然は運命の悪戯か。リィエルの命を救うため、そしてアルベルトの真意を問いただすため、愚者のグレンは帰還する!

グレン vs アルベルト! 最高の相棒であり好敵手でもある男との真っ向勝負! こんなん熱くならないわけがないじゃん!
かなり強いのにやたらかませ感溢れる新キャラ達の華麗なる登場と退場ぶり(笑)といい、少年マンガもかくやの王道ストーリー展開が素晴らしかったです。
ワケがあったとはいえさすがに無茶しすぎでしょ、と思えたアルベルトの行動の裏にあった真の理由もしっかりラストで回収されて、ははぁ参りました(平伏)といった感じである。


突然倒れたリィエルの命を人質に取られ、アルベルト討伐という恐るべき任務に駆り出されることとなったグレン。
任務に同行するのは、どうにも胡散臭い新生特務分室の面々……。そもそも、アルベルトが女王暗殺未遂というのもおかしな話だし、どこもかしこもなんだか気に入らない流れなんだけれども、他ならぬリィエルのために従わざるを得ないのが辛い。
新生特務分室の新室長・サイラスと、その子飼いの3人がまた嫌な奴らなんだ!
模擬戦という名目のもと、やる気のないグレンを引っ張り出して、自分たちの力を一方的に見せつけていい気になっていくやり方なんか反吐が出るし、それぞれの固有魔術はそりゃあ大したもんなのかもしれないけれども、それ以前に人としてわりとクズすぎる。とっととやられてしまえ……と思っていたら、我らがアルベルトさんが秒でやってくれました(爆)。


アルベルトは本当にいいキャラクターですね。初登場時はそれなりにデキるグレンの元相棒、くらいの造形だったと思うんですが、巻を追うごとに彼の真の凄さが見えてきて、今やセリカに迫るんじゃないかと思えるほど無敵感があるキャラになりました。
そんな超一流の化物を相手取り、才能で遥かに劣るグレンがどこまで戦えるのか。グレンだからこそ避けることのできるアルベルトの弾、アルベルトだからこそ読めるグレンの手管、互いに手の内を知り尽くした相棒との手の読み合いと裏のかき合いが実に熱かったです。
それから、今回もイヴがいい所を持っていきましたねー! 学院に来てからというもの、物語上でのイヴの扱いがかなり良くなった気がします(笑)。この人なんだかんだでやっぱり格好いいんですわ。ヒロイン力もどんどん高まっておりますし、負けてられませんよシスティーナさん!
事件がひとつ片付いた一方で広がってゆく帝国の闇。そちらも気になるといえば気になるものの、そろそろ明るい話が読みたい気分だなあというところで、次は「ちょっと賑やかな学園もの」とのこと! これは楽しみ! ラブコメってくれるかなあ?


「ひめ」と魔女の過去編も読みたいのう。

『弱キャラ友崎くん Lv.6.5』感想

弱キャラ友崎くん Lv.6.5 (ガガガ文庫)

ストーリー
あの日、彼女はまだ完璧じゃなかった。
あの日、彼女は人前で初めて泣いた。
あの日、彼女はすべてを振り切るスピードが欲しかった。
あの日、彼女は――……。
日南、菊池さん、みみみ、優鈴――。少女たちのあの日の想いが、ここに紐解かれる。6巻と7巻をつなぐ“彼女”の気持ちも……? 「弱キャラ友崎くん」の世界がさらに色づく、珠玉の短編集。

シリーズ初の短編集。6巻の引きがアレだったので、「ここにきて短編集なのかよぉー!」と悶絶しました。このタイミングで語りたかったことがある……と説明はされていましたが、さすがにドSすぎるでしょう!
しかしそれはそれとして、日南や菊池さん、そして誰より、みみみの視点から描かれる、過去のお話や本編の裏話などなど、どれも興味深いエピソードでした。中でもやっぱりみみみの短編が格別でしたね! ほんと、みみみはヒロインとしても主人公としても魅力的な女の子ですよ。


第1話は中学生時代の日南の初彼氏(!)との出会いと別れを描いたお話。
いやあ、日南のことは常々「怖い」だとか「腹黒」だとか「ラスボス」だとか言ってきたけれども、中二の時点でこれかよ!
日南を射止めたつもりで舞い上がって、実際は手の平で転がされている先輩……正直不憫である。まあ日南のお相手を務めるには役者不足だったということで。
しかし思春期真っ盛りのはずの時期にこの冷めた視線。日南が男に惚れるようなことは、果たしてあるのでしょうかね?


第7話はみみみが友崎やたまちゃんの成長ぶりに戸惑い、新たな気持ちで一歩を踏み出すお話。
今回はこの短編が一番好きでした。表向きは常に明るくて朗らかな彼女が秘めた年相応の悩みと、それを振り切ってからのスポーツ少女らしい清々しさ。これぞ青春! といった気持ちのいい一話でしたね。
ラストの日南との一騎打ち! 日南には何かと負けっぱなしだったみみみの最後の一華! そりゃもうここは、みみみを応援せざるを得ないというものでしょう。
しかし日南は、完璧すぎるが故に、どこに行ってもラスボスキャラになってしまうよね……損な役回りのヒロインである(苦笑)。


そして第10話。前巻の「あの一言」の後のみみみの姿を描く掌編に悶絶。
ぐわー! かーわーいーいーんーじゃーーー!!!
あんだけ飄々とした風に爆弾放り投げといて内心バクバクとか、それはズルいでしょみみみさん! こんなん好きになっちゃうじゃん!
7巻へのさらなる期待が高まりまくったところで今回はお開き。ともかく早いところ次を! 次をよろしくお願いします!!


優鈴と中村のバカップルぶり、最初は微笑ましかったけれども最近ちょっとイラッとしてきました(笑)。

2018年面白かった新作ライトノベル10選

 皆さまお久しぶりです。いつの間にやら世間は大晦日! 今年読んだ新作の中で特に面白かった10作品! 書いていっちゃうよー!




【上半期】
エートスの窓から見上げる空 老人と女子高生』(ファミ通文庫
エートスの窓から見上げる空 老人と女子高生 (ファミ通文庫)


『西野 ~学内カースト最下位にして異能世界最強の少年~』(MF文庫J
西野 ~学内カースト最下位にして異能世界最強の少年~ (MF文庫J)


『三角の距離は限りないゼロ』(電撃文庫
三角の距離は限りないゼロ (電撃文庫)


『オミサワさんは次元がちがう』(ファミ通文庫
オミサワさんは次元がちがう (ファミ通文庫)


『オタギャルの相原さんは誰にでも優しい』(MF文庫J
オタギャルの相原さんは誰にでも優しい (MF文庫J)


 2018年上半期からはこの5作品! それぞれへのコメントはこちら(『好きラノ』2018年上期に投票します - まだまだペンキぬりたて)で書いているので割愛。『西野』は順調に出続けている上に最新巻の4巻も面白くてよかったなあ。『オタギャルの相原さん』、続き出てくれないかなあ……。




【下半期】
『死神に育てられた少女は漆黒の剣を胸に抱く』(オーバーラップ文庫
死神に育てられた少女は漆黒の剣を胸に抱くI (オーバーラップ文庫)
感想→『死神に育てられた少女は漆黒の剣を胸に抱くI』感想 - まだまだペンキぬりたて
 とにかく抜群に痛快な私TUEEE戦記ファンタジー。か弱げな美少女が剣を振り回して無双するのが本当に好きなんです。すみません。敵味方の軍師や将軍が緻密な作戦を立てて攻防する中、ただひとりイレギュラーとして戦場を駆ける主人公の姿が目を見張るほど格好良く、そして恐ろしい。2巻も素晴らしかったです……そのうち感想書きます。


『彼女のL ~嘘つきたちの攻防戦~』(ファミ通文庫
彼女のL ~嘘つきたちの攻防戦~ (ファミ通文庫)
感想→『彼女のL ~嘘つきたちの攻防戦~』感想 - まだまだペンキぬりたて
 3人の少年少女と「嘘」を通して、とある少女の死の真相を解き明かしていくミステリアス青春ストーリー。「自殺」という重いものをテーマに挙げつつも決して暗くなりすぎず、胸を打つ切なさと優しさに満ちた結末へと導いていく、これぞ三田千恵マジック。もはやファミ通文庫を代表する青春ラノベの旗手になった感すらあります。


『異セカイ系』(講談社タイガ
異セカイ系 (講談社タイガ)
感想→『異セカイ系』感想 - まだまだペンキぬりたて
 講談社タイガをこういうラノベベスト系記事に入れていいものかどうか毎回迷うんだけれどもこればっかりは入れざるを得ないなあ! 異世界転生系っぽい出だしから、作者、物語、読者、キャラクター、現実、フィクションが目まぐるしく入り乱れる怒涛のメタフィクショナルワールドへ。「なろう」読みで未読の方がもしもいたら! 騙されたと思って読んでほしいです。とんでもないよ。マジで。その際はぜひ紙の本で!


『公園で高校生達が遊ぶだけ』(講談社ラノベ文庫
公園で高校生達が遊ぶだけ (講談社ラノベ文庫)
感想→『公園で高校生達が遊ぶだけ』感想 - まだまだペンキぬりたて
 名は体を表す、タイトル通りの、「公園で高校生達が遊ぶだけ」な日常コメディなのだけど、その辺にいそうな高校生達がただどうでもいい会話をしているだけでこんなにも面白く仕上がるのかと驚愕。あたかも、良くできたミニコント集を読んでいるかのような気分に浸ってしまう。あと幼馴染スキーは必読です。


『七つの魔剣が支配する』(電撃文庫
七つの魔剣が支配する (電撃文庫)
感想→『七つの魔剣が支配する』感想 - まだまだペンキぬりたて
 たぶん100万人が同じこと言ってると思うけど、これぞ和製『ハリー・ポッター』。魔法学校×侍少女のチャンバラなんて力技、よくもやってのけたなあ! 宇野朴人先生らしいダークさや、これから効いてくるだろう伏線も散りばめられていて、今後の展開が大いに楽しみな一作。




 以上、2018年の新作ライトノベル10選でしたー。
 今年はラノベを読めた時期と読めなかった時期の差が大いに激しかったのですが、たぶん150冊以上は読んだんじゃないかな……読んだ気がするな……200はワンチャン読めて……ないかもな……と、そんな程度の偏差値のひくーいラノベ読みな1年でした。まあたくさん読んだら偉いってわけでもないんですけども。
 ブログもね、全然更新しない時期があったかと思いきや100日連続更新をやってみたりもして、なんだか落ち着きのない1年でした。本当はもう少し更新するつもりだったんですけど。
 あ、あと地味ーに今年も『このライトノベルがすごい!』にラノベ紹介記事を何本か書かせてもらいました。ダンまちとか書いてるよ!
 Twitterをご覧の方ならばご存知の通り、特に10月以降は完全に他コンテンツにうつつを抜かしてしまっておりまして、まあ、あちらはあちらで僕は本気なんですが*1、2019年は本職の方も忘れずに頑張っていきたいなと思う所存であります。
 こんな節操のないブログに付き合ってくださった皆さま、1年間ありがとうございました! 来年もよろしくお願いいたします。よいお年を!

*1:3月8日空いている方はぜひ僕と一緒にSSAへ!