まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『おまえ本当に俺のカノジョなの?』感想

おまえ本当に俺のカノジョなの? (MF文庫J)

ストーリー
計算打算を駆使し高校デビューを成功させた俺・優哉は、誰もが羨む美少女三人との「理想の青春」を満喫していた。なのに、突然カノジョを自称する幼なじみ・望海が現われて崩壊の危機に! って、あれ? なんでみんな急に恋のやる気スイッチ押しちゃったの? 俺らの関係は、なぜか俺争奪のアピール合戦へと急展開でドキドキさせられっぱなし! マズい……俺には、絶対に修羅場を避けたい事情があるんだ。こうなったら俺の計算打算でアピールを華麗にかわしてみせる! ん、なんだよ望海。「優ちゃん、計算高いクズに成り下がったんだね」だって? 辛辣すぎ! しかも、なんでお前が修羅場をけしかけてくるの!?

美少女3人との青春を楽しんでいた主人公の日常が、突如来襲した幼馴染みの一方的なカノジョ宣言によって一気に修羅場化していくドタバタ学園ラブコメディ。
自らの青春を守るため、女の子から好意を寄せられても決して恋愛関係には進もうとしない八方美人で打算的な主人公にはイライラさせられたけれども、そんな彼が敵意バチバチのヒロインズにどんどん追い詰められていく展開が痛快で良かったです。
思いっきりお話の途中でぶった切られているので続いてくれないと困るぞ。


念願の高校デビューを果たした主人公・小野瀬。クラスメイトの遙香、生徒会長の月原先輩、部活のマネージャーの未央という3人の美少女と恋人未満な関係を育み、明るい青春を謳歌していた……のだけれど、そんな彼と再会を果たした幼馴染み・望海が突如カノジョ宣言をしたことによりその日常は一変していく!
誰にでも分け隔てなく優しい、気のいいヤツ。そんな姿を演じて計算高く自らの望む「青春」を作り上げてきた小野瀬。
まあその努力は買うけれども、青春を堅持することに躍起になって、女の子たちの気持ちなど何も考えてないように見えるあたり、本当に計算高くて嫌な奴って感じがする。端的に言って……ゴミクズ……だよね……(辛辣)。中学時代の黒歴史? 知らんわそんなもん!
だいぶヘイト値高めな主人公だからこそ、その青春がどんどん崩れていくのは見ていて楽しいんだけれども、結局小野瀬がラブコメ的においしい思いをしていることには変わりなく、なんだか釈然としないものを感じる!


そんなクズに惚れてしまった4人のヒロインはみんなそれぞれ魅力的で甲乙つけがたい。まあ4人もいるので、まだ各々の浅い部分しか描かれていないということもありますが。
明るくてテンション高く接してくれる遙香も、ちょっとエロくからかってくる月原先輩も、どこまでも健気な未央ちゃんも、みんないい子なんですわ。や、本当に小野瀬がいいの? 正直目を覚ましてほしい(笑)。
そんな中、唯一小野瀬の八方美人ぶりを見抜いているのが6年間離れ離れだった幼馴染みの望海。6年間ずっと小野瀬と付き合っていたと思い込んじゃっているあたりとか、だいぶ妄想癖の激しい子ではあるけれども、小野瀬のいい部分も悪い部分も全部ひっくるめて好きって言ってくれるめちゃくちゃ一途で可愛い子なんですよ! もう望海でいいじゃん……望海とくっついてハッピーエンドを迎えてあとはズブズブのイチャイチャ劇を繰り広げてほしいぞ……だめかな?
4人のヒロインとの修羅場な日々はまだ始まったばかり。ぜひちゃんと決着がつくところまで描ききってほしいですね。次巻を待ってます。


イラストはろうかさん。某ページの小野瀬アップはちょっとビビりました(笑)。
キャラデザでは望海と未央の後輩組が好きですね!


あとがきの出だしのエピソードに心当たりがありすぎて「お前は僕か」って突っ込んでしまった。

『ファイフステル・サーガ2 再臨の魔王と公国の動乱』感想

ファイフステル・サーガ2 再臨の魔王と公国の動乱 (ファンタジア文庫)

ストーリー
「許せないわ。わたしたちの結婚式であなたを殺すなんて」フライスラント軍の撃退に成功したカレルだが、その武勲とセシリアとの結婚を快く思わない何者かの暗殺が計画される。「こうなったら未来を変えるべく行動するしかない」犯人の手がかりを求めてカレルはドワーフの国へ向かうが、黒幕の策略はすでに二重三重に仕掛けられていた! そして公国に広がる動乱は、二人の英雄を引き合わせることに! 「カレル、おまえにはせいぜい苦労してもらうとしよう。なに、少しぐらいなら手伝ってやる」カレルとヴェッセルの邂逅は歴史を大きく動かす――!

自らの死を夢見るという聖女の力を用いて、何者かが仕掛けてきた暗殺計画に対抗していく、気鋭の戦記ファンタジーシリーズ第2弾。
今回も順調に面白かったです。何かと敵の多い苦しい立場の中、ヒロインをはじめとした仲間たちの助けと自身の知略とでギリギリ生き抜いていく主人公の姿が熱い。
次期公爵という責任があるからというだけでなく、こんなに素敵な婚約者を奪われてなるものかという卑近な執着心なんかもちゃんとあって、そんな主人公に好感が持てます。


前回に引き続き隣国フライスラントとの戦争が描かれる……のだけれども、敵は外だけでなく内にも迫っていた!
最強の傭兵団の団長とはいえ、いきなり平民が公爵になろうとしているのだから、そりゃ快く思わない人間もいるわけで。想定内といえば想定内なのかもしれないけれども、しかしそれはそれとしてむかっ腹は立つよね(苦笑)。
まあカレルのやり方も、人質に取った王姉の妊娠の噂を流すとか、決して綺麗なやり口ばかりではないんですが、かといって主家を裏切るほどでもあるまいに……。あちらを立てればこちらが立たずという具合で、フライスラントの侵攻を防ぎつつ周囲に納得してもらうというのはなかなか難しい。つくづく、カレルの置かれた立場の難しさが思いやられる。
そんなカレルの最大の武器はやはりアレンヘムの聖女たるセシリアの夢見の力。未来の毒殺を防ぐべく、果断な決断力で物事を推し進めていくカレルは、未だ成長の途上ながらなかなかに格好良く思えました。


思わぬ大物の裏切りと卑劣な罠。窮地に立たされるカレルとセシリア、そしてアレンヘム公国。
そんな中、もう1人の主役・ヴェッセルとカレルが遂に対面を果たしました。いやあ、ヴェッセルは一見冷酷な貴族然としつつも、実はかなり人間臭いところがあって面白いキャラクターですわ。抱えている謎も多いし、出番は少なくても2人目の主役にふさわしいだけの魅力がある。
今はまだカレルの方が立場としても器としても足りていないかもしれないけれども、これからきっと長く競い合い並び立っていくのだろう2人の英雄の邂逅と思うと、なかなか燃えるものを感じました。負けるなカレル。がんばれカレル。
ヴェッセルの助言もあり、追い詰められた状況から一気呵成に反撃に打って出るカレルと《狂嗤の団》は、見ていて大変に痛快でしたね! 特にやっぱり「歴代最強」コルネリウスが群を抜いてクールでした。この強さとこの顔で唯一の弱点がこれとか、ちょっとズルいのでは? いやーこいつ好きですわー。
次はまた新たな戦いが待ち受けているようで、ファンタジー世界がどんどん広がっていくのがとても楽しみ。あとミーリエルのさらなる活躍を期待してます!


早く! 「具体的なシーン」の続報を早く! ください!!(血眼)

『名もなき竜に戦場を、穢れなき姫に楽園を』感想

名もなき竜に戦場を、穢れなき姫に楽園を (ファンタジア文庫)

ストーリー
名前のない荒野。魔導王国と機械帝国の果てなき戦争により、命が無価値に失われ続ける戦場には、二人の“最強”がいる。魔導王国の獣騎兵<屍喰竜>として戦場を蹂躙するクロト。帝国最新鋭の兵器を駆るために生み出された姫、ロア。「俺たちは相容れない。戦争の終結は屍喰竜による殲滅だけだ」「戦争を終わらせて、わたしの名を栄光と共に刻むんだから」無惨に死んだ少年兵たちの命を背負うクロトと、勝利という理想を求めるロア。戦場以外で邂逅するはずのなかった宿敵同士が出会い、彼らは知る。互いの胸に抱く願いと決意を――。銃と咆哮、存在すべてをかけて戦う少年と少女の激戦の物語。

魔導王国と機械帝国の終わらない戦争。両軍の最強の戦力である少年と少女が異界で思わぬ出会いを果たすボーイミーツガール。
宿敵である少年少女の運命の出会い……いいじゃないですか! ロマンだね!
魔導と科学、国家体系が全く異なる両国の異種格闘技戦じみた戦争描写もユニークで読み応えがありました。


百年以上に渡って戦争を繰り広げてきた魔導王国と機械帝国。そしてその両国には、それぞれ「最強」が存在していた!
強大な竜の姿に变化する王国の少年・クロト。科学の粋を極めた人形兵器を駆る帝国の少女・ロア。戦場でも幾度となく戦いあった両者は、運命のイタズラにより思わぬ形で顔を合わせることに……。
魔法や呪詛といったオカルト満載の王国と、メカや兵器の数で押す科学国家の帝国。ファンタジーとSFの世界が間違って繋がってしまったような戦場でありながら、どちらが優勢ということもなく戦況は膠着し続けているという不思議な戦争が興味深いです。


そんな中出会う、王国最強の少年と帝国最強の少女。お互いの正体は知らないままに迷い込んでしまった異界から脱出するため一時休戦する両者は、見ていて気が気でない。
ファンタジー世界とSF世界。お互いのことを理解するには常識がかけ離れすぎている両者だけれど、何度かそうした出会いを重ねる内にいつの間にか心の距離は近くなっていく……という王道展開にニヤリ。敵味方に分かれたロマンス、いいものですなあ。
しかしクロトもロアも、戦場に出なければならないそれぞれの理由を抱えている。たとえ多少仲が縮まったとしても、簡単に戦いをやめられるような立場にはなく、またそんなつもりもない。ただ、戦いの中で相手の顔がよぎる……そんな葛藤の中で戦う二人の姿が苦しく切ない。
戦争をやめられないのは両国家も同じ。もはや止められないところまで来てしまっている。国を挙げて敵国を潰そうとする人々の意志の中、クロトとロアが見出す起死回生の挑戦。最強同士の最初で最後の共闘。うーん、熱いね!
物語は綺麗に幕を閉じているんだけれども(そしてここから続けようがないような気もするんだけれども)クロトとロアの今後も見てみたいなあ。どうにか続いてくれないかなあ。


イラストは切符さん。可愛らしさとシリアスとがマッチしたイラスト。さすが。
アマリネさんのいい女感がすごい。


怪物とメカが飛び交う戦場をビジュアル的に見たいんだけれども、コミカライズとかどうですかね……?