まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『ロクでなし魔術講師と追想日誌3』感想

ロクでなし魔術講師と追想日誌3 (ファンタジア文庫)

ストーリー
グレンが学生時代の後輩と、フェジテの事件を万事解決!?――『魔導探偵ロザリーの事件簿』。学院の体験学習会に、魔術学院の誇る変態講師陣が登壇!――『魔術学院わくわく体験学習会』。学院のストライキに生徒会長・リゼが暴動鎮圧へ動く!――『生徒会長と混沌議事録』。グレンが想い人(!?)へのプレゼントのためブラックマーケットへ参加!?――『誰がために金貨はなる』。そんなロクでなしな日々が綴られる! そして――「私は……好きだよ。グレン君の夢」正義の魔法使いになろうと足掻くグレンと、それを支えるセラ。二人の足跡を辿る軍属時代のエピソードがついに解禁!

学院で巻き起こるドタバタ事件の数々と、グレンの過去のエピソードを描く短編集第3弾。
今回も楽しかったー。本編の方はここのところ大事件の連続だったので、短編という形であっても、学院での日常がこうして読めるのは嬉しいですね。
短編集恒例の書き下ろし・グレン過去編には遂にセラが登場。ちょっと、めっちゃヒロインですやん……切なくなってしまう。


書き下ろし含め5本の短編が収録されています。新登場のポンコツ魔導探偵にしてグレンの後輩・ロザリーや、学院の凄腕生徒会長・リゼなど、本編では活躍の機会があまりないキャラクター陣にスポットを当てられるのも短編集の良いところ。
5本の中でも特に好きなのは第2話ですね。学院での体験学習の講師としてグレンたちが駆り出されるお話なのですが、コメディ特化の回で単純に楽しかったです。それにしてもギャグパートでのオーウェルとツェスト男爵のコンビの鉄板ぶりが笑える。あとセリカ様は年齢というものをどうか考えて(ここで文章は途切れている)
第4話、グレンがとある女の子のために闇オークションに参加するお話も面白かったですね。ハーなんとか先輩、グレンと張り合うとどうしてこんなアホの子になってしまうん……? しかしグレンの奴、いつもは金の亡者のくせに、大事なところではこんな風にカッコつけちゃうんだからさ。しょーもない野郎だけれどやっぱり根っこはイケメンなのである。


書き下ろしの第5話は、宮廷魔導士団時代のグレンとセラが関わったとある悲しい任務の顛末を描いたお話。
今よりもずっと精神的に不安定だったグレンの唯一の支え。いつも隣りにいて寄り添ってくれた頼りになるお姉さん、セラ。彼女はこんな殺伐とした組織にいるのが不思議なくらいに天真爛漫で、魅力的なヒロインでした。だからこそ、この後待ち受けている悲劇のことを思うと胸がずーんと重くなってしまう……。
この過去編がどこまで続くのかは分かりませんが、グレンという主人公を語る上で避けては通れない内容だと思うので、今後も覚悟して読んでいきたいです。


システィーナとのイチャイチャ分が足りないぞぉぉぉ!

『やがて恋するヴィヴィ・レイン6』感想

やがて恋するヴィヴィ・レイン (6) (ガガガ文庫)

ストーリー
史上最大の会戦に勝利したジェミニ率いる帝国軍はバール川を越え、共和国領への侵攻を開始した。撤退する共和国軍の直上を飛行する戦艦バルバロッサに乗り合わせたファニアは「尋ねびと」に巡り会い、魔女の口から「星の意志」を伝え聞く。動きはじめる二機の熾天使級機械兵。エデン飛行艦隊に攻撃を開始するジュデッカ皇帝ヒルガルダ。そしてついに全貌を明らかにするワールド・トリガー。群雄たちの思惑が交叉するなかジュデッカに堕ちたルカとミズキの運命は!? 犬村小六が贈る壮大な生命のドラマが、いよいよクライマックス!

グレイスランド、エデン、ジュデッカに分かたれた世界の秘密が明かされる、クライマックス一歩手前のシリーズ第6弾。
遂にヴィヴィ・レインが登場! 彼女のことも含め、これまで散りばめられてきた色々な謎が一気に明らかになっていくのが楽しくてぐいぐい読んでしまった。
それにしても、1巻の頃から考えるとずいぶんスケールのでかい話になってきたもんです。文字通り、世界を変えてしまうような。


ジュデッカに降り立ったルカとミズキ。エデンの戦艦の中で目覚めたヴィヴィと、偶然乗り合わせたファニア。運命の4人が集うとき、世界もまた生まれ変わる……。うーん、ロマンだなあ!
いやね、僕はわりと、ファンタジー世界に隠された成り立ちの秘密! とか、この世界の真相! とか、そういう展開はあんまり好きじゃない方なんです。なぜかというと、これまで主人公の身の回りだけで動いていたストーリーが、一足飛びに世界の創世が云々、という話になってもわりと「どうでもいいから、もっと地に足つけた話やってくれ」という思いにしかならないからなんですが。
でもこの作品の場合、ルカたちがやってきたことが徐々にスケールアップしていって、あくまで地続きに「世界を動かす」というところまでたどり着いた感があって、素直にお話のスケールの大きさに感嘆できます。この丁寧な風呂敷の広げ方は、さすがの犬村小六だなあと思わざるをえません。


念願の再会と、邂逅。そして世界の命運は4人の手に委ねられる。
ルカとファニアの微笑ましい恋にはやっぱりニヤニヤしてしまうけれど、世界のため、人々のためにそれぞれが選ぶ手段は正反対のもので、たとえ相手が愛するひとであっても、どちらも譲ろうとはしない。それがとてもルカらしく、またファニアらしいところであり、魅力だ。
互いを想いあいながらの別れ。いっそこのまま二人きりで、という衝動と戦いつつ、それぞれの使命のために離れるその姿がとても切なく美しい。悲恋だなあ……。
また、ルカとともに「トリガー」を握る運命の女・ヴィヴィ。彼女の中に眠る子のことを思うと、ある意味ファニア以上に、ルカとの出会いの場面ではぐっとくるものがありました。
最終巻では、作品タイトルの意味がきっと明かされることでしょう。ここから始まる「恋」の予感に、なんだか無性にドキドキしてしまいますね。
世界の変革、最後まで見届けたいと思います。


グレゴリオさん制服フェチだったのか(いい趣味してるね!)。

『やがて恋するヴィヴィ・レイン5』感想

やがて恋するヴィヴィ・レイン (5) (ガガガ文庫)

ストーリー
「何百万人死傷しようがかまわない。おれはファニアのために世界を焼く」。史上最大の軍勢を率い、すさまじい勢いで進撃するルカはいつしか「災厄の魔王」と呼ばれ、世界そのものを敵に回していた。自由と平等を否定し、武力による変革を断行するルカに、ルナ・シエラ共和国第二執政カミーユは反旗を翻すことを決断する。一方、限られた生命を生きるアステルには「そのとき」が迫り――「あの歌が、あたしがあんたのそばにいるって教えてくれるよ」。いよいよ舞台が大きく動き出す激動と感動、恋と会戦の物語、第五巻……!

ぎゃー! ちょっと読むのをサボっているうちに最終巻が刊行されてしまったー! ということで遅ればせながら5巻読みました。
いや正直この表紙から嫌な予感しかしないじゃないですか。だから読むのをためらっちゃったというのもあるんですけど。アステルって本当にいいヒロインなので、当初から予告されていた瞬間とはいえ、やっぱり辛いものは辛い。
ルカにとっても過去最大級の挫折の巻で、読んでいてなかなか苦しいものがありましたが……ラストの展開はなかなか爽快でした。ここからが巻き返しの時間だ。


ジェミニに攫われたファニアを救い出す。ただそのためだけに共和国全国民を騙し、周辺国家を次々に攻め落とし、帝国との史上最大の決戦に望む災厄の魔王・ルカ。
たったひとりの最愛の人を救うべく世界を戦乱の渦に叩き込む。響きはロマンチックだけれども、やっていることは間違いなく巨悪です。
主人公としてはまあね、格好良いと言えなくもないけれども、それにしたってファニアが連れ去られてからのルカはどうもおかしい。戦争と仕事の鬼になって、ロクにアステルの相手もしてくれないし、良くも悪くも少年らしかったあの頃のルカはどこへといった感じで、見ていて悲しくなってしまいます。
アステルには、時間もあまり残されていないというのに……。それをルカに隠して、精一杯明るく無邪気にふるまうアステルが切ない。


ルカとジェミニ。2人の覇王が雌雄を決する天下分け目の戦い。ここまで怒涛の勢いで敵軍を蹴散らしてきたルカたちが、今回も得意の分進合撃で帝国へと攻め入っていく。でもやっぱり、ジェミニはそうやすやすと敗北するような男ではなかった。
いやー、ぶっちゃけこうなるのは予想できていたというか、最初からフラグ立ちまくりだったもんなあ。それにしてもジェミニの奴は、ほんと嫌な野郎ですわ。やり口がもう。えげつない。そしてそんな辛い戦いの中でも、人一倍輝きを放つ男がひとり。いい生き様でした。
終盤の主人公はアステルでしたね! 残りわずかな時間を、ルカと一緒に過ごすために、ルカを生かすために、使い尽くす。適当なやりとりばっかりしているようで、実は誰よりも相棒・ルカのことを思っている彼女。そしてルカもまた。7年間ずっと隣にいた、誰よりも深くお互いを知るふたり。
だからこそ、こういった鮮烈な結末を迎えることになったのかもしれない。落ちるところまで落ちたけれど、希望の炎はまだ潰えていない。ここからが本番。最終巻まで一気に駆け抜けてしまおう。


エロイサさんみたいなキャラクターは結構好き。いいように操られたい。