まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『黒の英雄と駆け出し少女騎士隊』感想

黒の英雄と駆け出し少女騎士隊 (電撃文庫)

ストーリー
とある世界のとある大陸では、国同士の大規模戦争の代わりに代表者チームによる代行戦争・虹星練武祭が行われるようになっていた。最近負け続けているある国でひっそり暮らしていたかつての英雄レグは、幼馴染みである女王代行に無理やり頼まれ、今回の虹星練武祭に参加するための騎士候補の育成に関わることに。しかし騎士候補の彼女たちは、それぞれ素質はあるものの、まだまだ騎士としては未熟。そのうえ性格にも問題があったりして……。はたして、おちこぼれ少女たちと元英雄レグは、祖国の危機を救えるのか!?

かつて英雄と呼ばれた青年が個性バラバラな少女騎士たちをスパルタ指導していく師弟×バトルファンジー
おー、これは良かった。一見無茶にも見える指導の日々の中で少女たちが確かに成長していく姿と、指導役の主人公の格好良さがしっかり描かれていて読んでいて楽しかったです。
目標はまだまだ遠いところにあるので、ぜひ長期シリーズになってもらいたい!


主人公はかつて虹星練武祭で優勝した英雄・レグ。現在は表舞台から姿を消しており、こまごまとした仕事で生計を立てているやさぐれ系の青年です。
そんな彼が教導員として指導していくのは、性格も戦いぶりもバラバラで、でもそれぞれに才能の片鱗を垣間見せる少女騎士見習いたち。
妹のようにレグを慕う幼馴染み・ミレイ、何かと高圧的な現王女の姪・リア、なぜかレグを敵視する謎の少女・シーリス、研究者基質の最年少・セーラ。
昔英雄と呼ばれていたとはいえ、現役世代を知られていないこともあり、ミレイ以外の信頼を得られていないレグ。まあ愛想のあの字もないような適当対応ぶりなのでさもありなんという感じですが、そもそも騎士として大成するのはほとんどが女性というこの世界。男性騎士である彼の力量を疑うのも当然というもの。
ということで公然と歯向かってくる少女たちを相手取り、4対1のハンデ戦で圧勝してみせる元英雄。これこれ、教官モノはこうでなくちゃね!


秘めたる才能としては光るものを持っているけれども、何かと反発的で実に扱い辛い少女たち。
そんな彼女たちの目を覚まさせるようなスパルタ特訓。代表選考会までの時間もないというのに、自分たちがこれで成長できているのか、このクズ(に見える)教官についていって大丈夫なのか、そんな不安もありつつ、時間は過ぎてゆく。
それぞれ異なる理由だけれど、絶対に虹星練武祭に出場したいという気持ちは皆同じ。特訓の日々の中、辛くても諦めずに前のめりな彼女たちの姿勢が眩しい。がんばる女の子はいいものだ。報われてほしいと思います。
代表選考会を控え、騎士の巡回に同道する実地訓練に参加する少女騎士たち。ほぼ危険はない……そのはずが、イレギュラー的に現れた魔獣! 先輩騎士が倒れるという大ピンチの中、それでも諦めない熱い思いで強敵に立ち向かうミレイが格好良い。普段ぶつかりあっているリアとシーリスの共闘も、最年少のセーラの頑張りも胸を熱くしてくれました。
そしてラストに決めてくれるのはやはりこの人。か、かっけー! 光と闇が両方そなわり(以下略)。教官モノというのは教官役が誰より格好良くないと締まらないのですが、この戦いぶりは非常にテンション上がりました。中二的に!
少女たちに確かな成長は見られるものの、虹星練武祭優勝という目標は未だ遥かな高み。彼女たちの願いが叶うまで、ぜひシリーズが続いてほしいと思います。次巻が楽しみです。


イラストは山椒魚さん。クールなタッチのイラストですね。
陰影がバチっと決まった最後のレグのイラストが格好良くて好きです。


当面の推しはセーラちゃん!

『キミの忘れかたを教えて』感想

キミの忘れかたを教えて (角川スニーカー文庫)

ストーリー
「残された余命は半年――、俺はこのまま死ぬつもりだった」大学を中退してニートとなり、生きる価値がないと感じていた松本修は、昔からの悪友・トミさんの誘いで母校の中学校を訪れる。そこには芸能人となってしまった因縁の幼馴染み・桐山鞘音がいて……。この出会いが再び修の運命を突き動かす。『天才ゆえの孤独を抱えたヒロイン、凡才ゆえに苦悩する主人公。二人のすれ違いと、遠回りな青春に引き込まれました』『逃げて逃げて、逃げ続けたクズに残った一つの約束。胸が熱くなりました』発売前から感動の声多数。掴めなかったチャンス、一度何かを諦めてしまった人に贈る、大人の青春物語。

夢から逃げて生きる意味をなくしかけた青年が、かつて大切な約束を交わした幼馴染みと再会し、彼女とともにまた歩きだすまでを描く青春ストーリー。
良かったです。何もかもから逃げた結果手元に何も残っていないダメダメな主人公が、周囲の温かい大人たちの後押しをもらって最後のひと足掻きを見せる。胸を高ぶらせる熱量のある物語だったと思います。
自分がかつて裏切り、遠くに行ってしまった幼馴染みヒロインとの、数年越しの青春のやり直し。やだ、きゅんきゅんしちゃう!


大学を中退して地元でニートになり、身体を侵す病魔まで見つかってしまい、生きる目的を見失ってしまった二十歳の青年・修。そんな彼はある日、かつて一緒に歩いていこうと約束し、一方的に裏切ってしまった幼馴染み・鞘音と再会する……。
うーん、重い! いきなり重い! いきなり主人公に病気が見つかって、手術をしなければ余命半年とか言われていて、正直ちょっと好きじゃない感じの出だし。いや、闘病ものホントに苦手なんですわ……。
しかしそこからのお話の展開は意外と暗い雰囲気というわけでもなくて、修はただでさえ鬱屈した性格をしているので、ともするとそういう方向に行ってしまいそうなところ、母や、年上の友人・トミさんや、その奥さんであるエミ姉といった周囲の人たちの奔放さ、明るさでもって、上手くバランスを取っている。
周囲がみんな知り合いという気安さ。誰もが理由なく味方になってくれるという安心感。田舎ならではの温かみが丁寧に描かれていますね。


人気女子大生歌手・SAYANEは、しかし修にとっては高校時代までいつも一緒だった幼馴染みの鞘音であり、またかつて自分が一方的に裏切った相手でもある。
当然再会直後はギクシャクするし、鞘音からの視線も冷たいのだけれど、トミさんに強引に連れ回されるうち、自然にあの頃の関係性へと戻っていっちゃう。鞘音も心の中では修のことを大切に想い続けていて、それは修も同じで。幼馴染みってなんて素敵なんだろう。
修が鞘音の下から離れたのは、自分の才能が彼女の才能に遠く及ばないことに気づいてしまったから。当の鞘音の方は、才能の差なんてどうでもよくて、ただ修と一緒に音楽がやりたかっただけなのに。
こうして書いていると、ああ、本当になんてアホだったんだ修はぁぁぁー! 思春期のバカヤロー! とも思ってしまいます。でも、一度大きくすれ違ってしまった二人だけれど、またやりなおせるんだ。いつだって、素直な気持ちをぶつけることができたら、きっと。青春をもう一度。
正直、この先のお話を読むのは少し怖いのですが……。二人の物語をきちんと見届けたいという思いもあるので、続刊があるなら手に取りたいですね。


イラストはフライさん。もはや青春ラノベの代名詞的存在になりつつありますね!
各章を読んだあとに章扉イラストを見ると、沁みます。


エミ姉ちょっとずるいくらいえっちじゃない??

『リオランド 01.最慧の騎士と二人の姫』感想

リオランド 01.最慧の騎士と二人の姫 (角川スニーカー文庫)

ストーリー
リオランド王国の若き天才騎士・ミカドが戦場で出会ったのは、《科学》の異世界の姫・エチカ。監視役となったミカドとエチカは互いの信念に惹かれ合うが、リオランド皇女・“予言姫”リューリリリィにより、《科学》世界の王国侵攻が示され!?「オレはこの国とリューリ姫をお護りする。手を貸してくれ」「私はこの戦いを止めて故郷に帰りたい。お願い、手伝って」リューリへの忠誠、エチカとの約束のため、ミカドは戦場でその真価を示す。その先には別れがあることを――そしてリューリリリィの紡ぐ予言が、大陸を禍乱へ導くことを知りながら。魂を震わす運命と叛逆のヒロイックファンタジー、開宴!

岩井恭平先生が贈る重厚ファンタジー……と思ったら後から遠未来SFがドッキング!
ファンタジーとSFを力技でくっつけてひとつの物語にしていくバランス感覚はさすが。とはいえさすがに読んでいて目が回りました(笑)。
まだプロローグというところなので、ここから両世界の登場人物たちがどのような戦いを繰り広げていくのか興味津々です。


巨大な塔とともに落ちてきた謎の少女・エチカを連れ帰ったリオランド王国騎士のミカド。彼女は科学の星からやってきた異世界の姫だったのだ!
おおー、岩井先生のファンタジー作品だ! と思って勇んで読み始めたらガンガン入ってくるSF要素! いやあ、さすがに一瞬面食らいましたわ。
純粋なファンタジーも読んでみたかったけれども、この世界設定は唯一無二だなあ。趣味でやりたい放題やっているようでいて、それで物語を破綻させずに成立させてしまうのは作者の力量というものですわなあ。
ただ、ファンタジーの側も科学の側もそれぞれ設定が入り組んでいるので結構頭がこんがらがってしまいますね……。


キャラクター陣も個性的で良かったです。ダブルヒロインが対照的でしたね。自分の目的に対してまっすぐな科学の姫・エチカも魅力的だけれども、今のところはミステリアス極まるファンタジーの姫・リリィ推しかな。
そんな両者の間のキーマンとなる主人公のミカド。周囲から「魂なし」と蔑まれながらも使命のため一途なまでに自己を押し通す固い信念の持ち主ですが、自分の身を顧みない行動などもあり仲間たちからは心配されっぱなし。完成されているようでいてまだ成長の余地を残した主人公のようにも思えます。
科学側から一方的に攻撃をされた形で今巻は幕を閉じていますが、次巻以降はいよいよ本格的にファンタジー世界 VS 科学世界の戦いが描かれる模様。ファンタジー側に勝ち目があるようにはどうも見えないのですが……そんな不利な戦いの中でミカドやエチカがどういった働きをしていくのか楽しみです。


イラストはれい亜さん。好き(語彙力が低下している)。
リューリリリィ姫美しすぎる……。


ハァミアさんの報われない女感がたまらなく好きです。