まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『魔法使いです。勇者のパーティーを抜けたいです。1』感想

魔法使いです。勇者のパーティーを抜けたいです。 1 (オーバーラップ文庫)

魔法使いです。勇者のパーティーを抜けたいです。 1 (オーバーラップ文庫)

ストーリー
魔法ができる=モテる! 陰キャな魔法使い見習い、アベルは完璧な理論を生み出した。どんな偉大な数学者でさえ、この理論は覆せないのだ。反論してみるといい。計算用紙を火炎魔法で燃やしてやる。いいか数学者よ、紙は――燃える。しかし、なぜか完璧な理論は破綻し、アベルは未だ満足に女子と話すことすらできない。隣の席のイケメンはモテているのに。さらに、鬼教官・ミッシェルに通告された退学を回避するべく、魔術大会に出場する事態に陥り――!? いずれは勇者パーティーに所属する、陰キャだけどモテたい魔法使いが贈るファンタジーラブ(?)コメ、開幕!?

これは、陰キャラな魔法使いの少年が所属する勇者パーティーに居場所がなくなってソロプレイに走る物語……では!! ない!!!
いや将来的にそうなるのかもしれないけれども、少なくとも1巻時点では主人公の魔法使いの少年が美人鬼教官に手取り足取りの訓練を受けて魔術学校の魔術大会で優勝するまでの物語である。なんというタイトル詐欺! でも面白かったからよし!
語り口が少々クドすぎるのとややスベっていたのを差し引いても(笑)、リア充を妬んでばかりで魔法使いとしても未熟でやる気もなく小物っぷりだけが全開の少年が、唯一ちゃんと自分のことを見てくれる教官のために一念発起して頑張るストーリーが熱くて良かったです。


モテるために魔法を勉強しているものの一向にモテる気配のない陰キャラ魔法使い見習いの少年・アベル
平民上がりの彼は特待生の身分を守るため、魔術学校全体で開かれる魔術大会でベスト16に入ることを厳命されてしまう! しかも鬼教官と名高いミッシェル先生からマンツーマンでの指導を受けることに!
ということで作品のタイトルとは全く関係なく、戦闘がからっきしだったアベルがミッシェル先生との特訓を乗り越えて魔術大会へ臨んでいく道のりが描かれました。
地の文は基本アベルの一人称なんですが、まあなんというか、まさにぼっちのモノローグそのものという感じで、ギャグにしようとしてるのかもしれないけれどもぶっちゃけかなりスベり倒している……! でもぼっちの頭の中って得てしてこういう感じで、文字に起こしたら別に面白くもなんともないことを延々語っていたりするよね(ソースは僕)。


ミッシェル先生は苛烈な指導で学生たちから恐れられる美人教師。なりゆきで彼女とのマンツーマン指導になったわけだけれども、その特訓の日々の中で少しずつお互いへの理解が深まっていき、アベルもミッシェル先生もともに成長していく過程が丁寧に描かれていてとても良かったです。
思えば、周りから誤解されがちという点でアベルもミッシェル先生も似た者同士。アベルはミッシェル先生の、そしてミッシェル先生はアベルの唯一の理解者といっても過言ではない。先生と生徒とはいえ若い女と男、そういう方向に気持ちが進んでしまっても、仕方がない……よね?
ミッシェル先生の指導を胸に、そして他ならぬミッシェル先生のために、面倒くさがりでやる気のなかった少年が、工夫を凝らしてライバルたちに立ち向かう姿に燃えました。
そんな対戦相手たちも、リア充だったりセコい手を使ってきたり純粋な強者だったりと個性的なキャラ付けがしてあって、また裏にちょっとしたドラマがあったりもして楽しかったです。
1巻で魔法学校編が終了ということで、次は魔法騎士団編なのかな? ということはまだ勇者のパーティーには入らないのか?(笑) どんな展開が待っているにしても楽しみですね。ミッシェル先生も登場してくれるといいなあ。


イラストは甘味みきひろさん。アベルのキャラデザがかなり好きです。目付きワリーな!
あとミッシェル先生のツンとしたおっぱい(おっぱい)。


ミッシェル先生もルーナも魅力的だけれど正直シモンズ様のデレを一番期待している僕がいます。

『君と僕との世界再変』感想

君と僕との世界再変 (角川スニーカー文庫)

君と僕との世界再変 (角川スニーカー文庫)

ストーリー
2184年。人の価値は人間性で数値化され、それが通貨にもなり、働かずとも衣食住が保障された楽園――通称《庭国》。たった一人、数値が《0》の少年・アオは、外敵から国を守
ることで生計を立て、ただ生きるためだけの毎日を送っていた。その任務中、負傷した少女を手助けしたことでアオの日常は激変する――。起こりえないはずのテロ、それを皮切りに庭国の崩壊が始まると告げる少女。「あたしは崩壊を止める為に、今から20年後の未来から来たの。あんたも協力しなさい」荒廃未来の孤独な少女と楽園世界の無価値な少年、時空の十字路で二人の異端者が出逢う時――世界は、再変される!

第23回[春]スニーカー大賞<優秀賞>受賞作品。人の価値が数値化され人工知能によって管理された世界で少年と少女が世界の崩壊を防ぐために戦うSFボーイミーツガール。
SFだ! 遠未来モノだ! ディストピアだー! コンピュータによって人々がなんの不満もなく飼い殺されている歪みきった世界に迷い込んだ2人の異端者……うーん中二心ワクワクしちゃう!
とまあ、新人賞らしく世界設定はかなり凝っているんだけれど、最終的にただのバトルものになっちゃっていたのはちょっともったいない感じも。今後のストーリー展開次第では化けそうな作品です。


人の価値が数値化され、その数値によって人々が生かされている遠未来の世界「庭園」。一見楽園のようでいて、それは人の命に明確な順位を付けるディストピア
うーん、いいですね! 「拡散回路」に「サイファレンス」、「ヴァンダルシア」に「季節渡り」等々、SFラノベの象徴のような用語集にテンション上がっちゃいますわ。
交通事故が起きたら数値が高い方だけが保護されて生き残る……明らかにおかしな状況なのに、人々がそのおかしさに気付いていない空恐ろしさ。人工知能は人のためにあるとか言いながらも実際は人工知能に支配されている人間の愚かさ。
ごく自然に食事に抗酸化物質を入れてくる友人とか、ちょっとした場面でぞくっとするような描写があって良かったです。ただ、ほとんどアオの周辺のごく数人を描くだけで終始してしまったのが少し残念。せっかくのSF設定なので、個人的にはもっと他の一般的人々の生活も見てみたかったかなと思います。


「私掠官」として謎の化け物・エシの討伐に励むアオ。そんな彼の前に突然現れた未来の少女・モア。
モアによって庭園世界に隠された陰の部分と歪さが明かされ、そして世界の終焉が近いことを知らされる。
アオ自身に秘められた秘密や、世界を終わらせるテロリストの狙い、エシの正体など、情報を焦らしながら明かしていくのが上手いですね。まあそのせいで、1巻が終わってもまだ分からないことだらけなんだけれども。
特にアオの来歴には、おおと唸らされました。これはアツいね。アオとモアの出会いがより運命的に感じられて良いですわ。
世界の崩壊を防ぐため立ち上がった2人。果たしてテロリストの手から世界を守りきることができるのか、そしてその先には何が待っているのか。今後のお話に期待しています。


イラストは深井涼介さん。各章扉だけながら、それぞれ印象的な見開きイラストでした。
帯を外すとヴァンダルシアが咲き誇っているのがいい。ちょっとゾワッとしちゃう。


地球ってそんなに回ってたんだ……。

『異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術』感想

ストーリー
MMORPGクロスレヴェリにおいて坂本拓真は、他プレイヤーから『魔王』と呼ばれるほど圧倒的な強さを誇っていた。ある日、彼はゲーム内の姿で異世界へと召喚されてしまう。そこには「私こそが召喚主」と言い張る少女が2人いた。拓真は彼女たちから召喚獣用の奴隷化魔術をかけられる――しかし固有能力《魔術反射》発動! 奴隷と化したのは少女たちだった! 困惑する拓真。彼は最強の魔術師だが、コミュ力が絶無なのだ。悩んで放った一言はゲーム内で使っていた魔王ロールプレイで!?「俺がすごいだと? 当然だ。我はディアヴロ……魔王と怖れられし者ぞ!」やがて世界を震撼させる魔王(演技)が絶対的な強さで突き進む異世界冒険譚、開幕!

TVアニメ放送中のライトノベルを読んでいこうキャンペーン。魔王として異世界に召喚されてしまった主人公が2人の奴隷少女を従えて無双するファンタジー
安心と信頼のむらさきゆきやブランド! やっぱり安定感がありますわ。最強の姿で異世界召喚という世に溢れた題材でありながら、ひとひねりした面白みをしっかり入れてくれるもんなあ。
不器用に魔王ロールプレイを続ける主人公と、そんな彼に大した疑問も持たず惚れ込んでいく2人の少女とのやりとりが可笑しかったです。


MMORPGで最強の魔王ディアブロとして君臨していた拓真。ある日彼は、そのMMORPGそのままのような異世界になぜかディアブロの姿で召喚されてしまう。
自分を召喚したらしい2人の少女、エルフのシェラと豹人族のレム。その2人がかけてきた隷属の魔術を魔王の装備で反射してしまい、2人の方を奴隷化してしまうのだった!
元々のMMORPGで魔王としてカップル撃退プレイをやっていたのはいいでしょう。女の子に慣れていないから上手く話せないというのもまあ理解できる。でもそれで咄嗟に魔王口調で話しかけちゃうのはおかしいやろ(笑)。いきなり「貴様ら」とか言い出しちゃって、やめどきが分かんなくなっちゃって結局魔王ロールプレイで通すことにしちゃうとか、なんて生きづらそうな魔王なんだ……妙に慣れているのがまた物悲しい……。


勝手知ったるゲーム世界ながら、元のゲームとは異なる部分も結構あって、探り探り自分の実力と知識とを確かめていく展開にワクワクしました。そうだよなあ、現実だったら転移魔法とかMP消費とかめちゃくちゃ怖いよなあ。
どうやらこの世界でも、自分が元のゲームと同じく最強クラスの存在らしいと判明してからの無敵感! 表面的には魔王っぽさを装いつつも、シェラやレム、そして街の人々を守るために敵をなぎ倒していく頼りになりすぎる用心棒ぶりを見せてくれました。
ダブルヒロインのシェラとレムは、初めこそディアブロの所有権を巡っていがみあってばかりであんまり好きになれませんでしたが、それぞれの立場や抱えたものの大きさを知っていくにつれて魅力が見えてきました。今のところはシェラ推しかなー。ちょっと天然っぽいエルフ少女、これだけでご飯3杯いけるよね。
ひとつ一大事を乗り切ったと思ったらまた新たな問題がやってくる。この魔王忙しすぎである。楽しかったので続刊も読みます。


イラストは鶴崎貴大さん。でけえ(表紙を見ながら)。
ビジュアル面でいうとエデルガルトさんがかなり好みです。


エミール君みたいなキャラ嫌いじゃないぜ。