まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『恋してるひまがあるならガチャ回せ!2』感想

ストーリー
真っ暗な俺の大学生活にも、夏休みがやってきた。夏といえば海!太陽!ではなく、スマホゲーの限定水着キャラだ。そんな折、俺は大学で笹倉美森という新入生と知り合う。彼女の誘いでモバイルゲーム研究会というサークルに入った俺と紗雪は、合宿で真夏の沖縄に赴く。欲しい水着キャラのコスプレをしてガチャれば引ける、という美森の言葉を信じて……。そこで俺たちは美森の驚愕の正体を知る。やつはあらゆるゲームで欲しいキャラを無料ガチャのみで一発引きし続ける『最強の無課金』だったのだ! まぶしい水着姿が無駄にはじける廃課金ラブコメ第2弾!

読まなきゃ! ということで読みました。
紗雪との同棲生活がさぞやきゃっきゃうふふと描かれるのでしょうなァ! と楽しみに読み始めたんですけどやっぱりそんな簡単なラブコメじゃないよねということでひとつ。新しい後輩ヒロインも出てきたことだしね!
しかしさすが廃課金勢の中でもトップの廃課金勢、器がデケーわ。そのへんの課金戦士とは魂のランクが違うね。コミュ障ぼっちの遠野と紗雪だけれどちゃんと先輩っぽいことできてて良かったです。


家を飛び出したお嬢様と安アパートで同棲生活じゃー! と思ったけれど、紗雪さんが案外あっさり諦めていて笑いました。まあ仕方ないですね。お嬢様だからね。
同棲こそしてないものの毎日のようにご飯作りにきてるわけだし、これはもう通い妻ですよ誰がどう見てもそうでしょう!
別に色っぽいあれこれがあるわけではないし、当人たちは認めてないけれども、周囲からすると完全に半同棲状態っていうこの感じすごくいいですよ……! なんか、下手に付き合ってイチャイチャするとかより、ふたりきりでずっとゲームしてるくらいの方がニヤニヤできていいよね!
そこを樋沢たちに突っ込まれて真っ赤になっちゃったりするのがまたいいんだ。絶妙な距離感ですよ。


後輩の美森に誘われてモバイルゲーム研究会に入ることになった遠野と紗雪。しかし美森には、げに恐ろしき秘められし能力が。
なんて新しいサークルクラッシャーなの、美森さん……。本人に全く悪意がなくて、周囲からただただ疎まれるだけなのが悲しすぎる。
しかしその真実を目にしても逃げないのが我らが廃課金勢コンビですよ。引けるまでガチャるから100%引ける、至言すぎる(人間としてはわりと駄目である)。
遠野と紗雪、ぼっち残念大学生カップル(未満)のふたりが、初めてできた後輩のために懸命に努力する姿、いいもんでした。
なんだかんだで美森ともいい感じになっちゃってますが、さすがに遠野と紗雪との間に入り込む余地はないのか?
このまま紗雪エンドに向かって一直線であってほしい気もするし、いやいやラブコメ的にもっと一波乱二波乱あってほしいような気もするし、どちらにせよたっぷりニヤニヤさせてもらえると思うので、ともあれ続巻が待ち遠しいですね。


いいじゃん★3。僕はそれくらいが好きですよ。ごめん嘘。★1~★5までぜんぶ好き。

『賭博師は祈らない(4)』感想

賭博師は祈らない(4) (電撃文庫)

賭博師は祈らない(4) (電撃文庫)

ストーリー
バースでの長逗留を終え、ようやくロンドンに帰還したラザルス。リーラは徐々に感情豊かになり、観光がてらついてきたエディス達との交流も続く。賭場の馴染みからは、そんな関係を冷やかされる始末。ラザルスは賭博師として日銭を稼ぐいつもの生活へと回帰していく。
だが幸福そうに見えるラザルスの心を陰らせるひとつの懸念――。リーラという守るべき大切なものを得たが故に、彼の賭博師としての冷徹さには確実に鈍りが生じていた。裏社会の大物や警察組織にも目を付けられつつも、毎日を凌いでいたラザルスだったが……。
そしてかつての恋人である賭博師・フランセスとの因縁が、ラザルスに決定的な破滅をもたらすことになる。

大きく揺らぐ賭博師としての「ラザルス・カインド」。そして最高の好敵手との因縁の対決。
シリーズの根幹をぶち抜くような見所満点・盛り上がり抜群の巻でした。ブラボー。


リーラとともにロンドンへ帰ってきたものの、明確に調子を崩すラザルス。
守るもの、大切なものができたという心の変化。それは人間としてはマトモなことかもしれないけれど、こと賭博師ラザルスにとっては致命的で。
しかもそういうときに限ってこう、街の裏側に潜む顔役に付け狙われたりするんだから、有名になるってのは怖いことですよ。
これまでもそれなりの目に遭ってきたラザルスですが、今回はまた別格の悲惨さでした。物心ついてから培ってきた全てのものがぶち壊されたのだから当然といえば当然かもしれない。飄々と「どうでもいい」とうそぶいていた彼が、まさかこうなるとは予想していませんでしたが、思えばリーラを助けたときから少しずつ何かが動き出していたようにも思えます。
でも僕はさ、フランセスとの1回目の勝負でこの選択をしたラザルスのことがやっぱり好きなんですよ。


義父から教え込まれた賭博師としての姿勢。かつての「ラザルス・カインド」の拠り所。
それを失って、落ちるところまで落ちて、乗り越えて。ラザルスは新たなラザルスとして歩みだす。
待ち受けるのはやはりこの女。どこまでも魅惑的で強く麗しくそして危険な賭博師フランセス・ブラドック。
新生ラザルスのデビュー戦にして後には引けない戦い。相手は互いをよく知るかつての恋人。1巻での対決を彷彿とさせる舞台設定。こんなん盛り上がらない方が無理っちゅーもんです。しかもあの勝負の続きまで持ち出してくるとか、もうほんとずるい。やってくれますわ。
ラザルスが滅びるか、フランセスが堕ちるか。そんな悲しい二択から逃れるために用意された最後の切り札も、もうなんというか最高でしたね。いやラザルスさん、それはちょっとイケメンすぎない?(笑) 綺麗な伏線回収に惚れ込んじゃいましたよ。
それにこの見開きイラスト! いやー僕はこの絵面が見たかったんだなあとしみじみ思ってしまいました。
もちろん僕はリーラ推しですよ! そこは変わらないんだけれど、やっぱりこのふたりの関係も、これはこれでめっちゃいいよねえ。


あとがきを読んで驚愕したのですが次で「本編完結予定」とのこと。となると、描かれるのはやっぱりリーラの行く末ということになりそうです。
個人的にはね、やっぱりラザルスとリーラには共にいてほしいという思いもあります。でも今のラザルスなら、彼女の本当の幸せのために……とかいうこともやりそうですし。
シリーズが終わってしまうのは寂しいけれども、このふたりの物語がどのような終幕を見せてくれるのか今から大いに楽しみです。


ブルース、お前なかなかいいキャラしてんじゃん。

『青春失格男と、ビタースイートキャット。』感想

ストーリー
高校に入学した日。野田進は桜の木から落ちてきた清楚系女子、宮村花恋と運命的な出会いをし、誰もが羨む高校生活を手に入れる。だが進は、そんな普通の幸せに満足できなかった。
「あなたは、青春不感症なんです」
そこに、エキセントリックな孤高の天才児、西條理々が現れる。彼女の言葉で、進の日常は甘くきれいに溶けだした。
「私の足を舐めろ、です。大人の味を教えてあげます」
友人も、家族も断ち切って、世間から孤立する。進と理々だけの秘密の共犯関係――“楽園追放計画”が始まった。目を背け、逃げ続ける。ふたりだけの幸せを信じて。

第30回ファンタジア大賞<審査員特別賞>受賞作品。
青春に興味を持つことができない少年が、唯一心を満たしてくれる孤高の少女と出逢い、2人きりの世界への逃避を目指す、ほろ苦青春ストーリー。
世間の普通に迎合することのできない少年少女が周囲との交わりを絶とうと試み、そして限界にぶち当たっていく苦しみがじんわりと胸を締めてくる作品でした。愛の形にフェティシズムが溢れていて素晴らしい。


高校に入学して早々、クラスメイトの美少女から告白されてしまった主人公のシン。しかし彼は恋愛や友人関係などに興味を持てない「青春不感症」なのでした。
告白してきた女の子・宮村さんは可愛く優しくちょっとえっちく、と非常に魅力的なヒロインで、このまま彼女と付き合うことができれば何も問題なくハッピーエンドでいいくらいなのですが、主人公の方がこうなのだから仕方ないですね……。男なんて選びたい放題だろうに、よりによってこんな厄介な相手を好きになってしまって、不憫すぎる。
恋愛をすれば何か変わるかもしれないと消極的に期待していたシンの前に現れたのは、周囲を寄せ付けず学校でも浮いている天才少女の西條。
シンの青春不感症を見抜き、シンよりも自分が上だということを決定づけるために彼女が命じてきたのは、足を舐めること。
出会い頭に公衆の面前で足を舐めさせる女とかもうヤバさの塊でしかないですけど、そこで舐めちゃうんだもんなーシンさん! しかもめっちゃ興奮してるんだもんなー! いや分かるよ、そのフェチは分かるんですけどね。正直テンション上がりますけどね。
そのprpr【ペロペロ】描写がまた、非常にねっとりしていてね。変態性を隠さず端的に言うと最高でした。


シンと西條。お互いさえいればそれでいい、他の人間なんていらない、とふたりで遂行しようとする「楽園追放計画」。
でもシンも、そして実は西條も、宮村さんをはじめ周囲の人たちを悲しませるようなことはできなくて。興味がないのだから全部ぶん投げてしまえればいいのだけれど、ふたりとも変に優しい部分があるから、結局がんじがらめで何もできない。ただ学校の隅でprprするだけ。そんな逃避ともいえないような逃避関係が切ない。
ええいと思いきったところで、シンも西條もただの高校生でしかない。ふたりのやっていることに共感はできないけれど、自分の思う通りに物事が進まないもどかしさ、自分の力の限界に感じる虚無感、そういったものには思い当たる部分がありました。
ふたりきりの逃走劇の終幕は思わぬ形で。シン、西條、そして宮村さんの歪んだ日常がこれからどう進んでゆくのか、今後の展開が楽しみです。


イラストはいけやさん。女の子たちの表情が素晴らしくよかったです。
特にやっぱりprprシーンが格別。これは舐める。舐めざるをえない。


初デートで会って早々に胸を触らせる宮村さんも冷静に考えたら大概である(すき)。