まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『暗殺拳はチートに含まれますか? ~彼女と目指す最強ゲーマー~』感想

暗殺拳はチートに含まれますか? ~彼女と目指す最強ゲーマー~ (ファンタジア文庫)

暗殺拳はチートに含まれますか? ~彼女と目指す最強ゲーマー~ (ファンタジア文庫)

ストーリー
VR格闘ゲーム「プラネット」で活躍するプロゲーマーの俺は、地味で無口な同級生美少女・葵が暗殺拳継承者という秘密を知ってしまう。彼女の動きや技なら、ずっと探していた俺のライバル候補になれるはず! それでゲームに誘ったら……「俺と(ゲームに)付き合ってくれ!」「ふ、ふつつか者ですが、よろしくお願いします」告白と誤解されて、恋人同士に!? 一瞬で加速する瞬発力。急所をついての一撃必殺! 学校では寂しがりで甘えてくるけど、ゲームではチート級の強さで強キャラたちを圧倒する葵。快進撃を続けた結果、俺と葵のバトルの強さはゲーム内で拡散していき、誰もが知る存在となる!?

暗殺拳の流派を受け継ぐ少女がVR格闘ゲームで鮮烈にデビュー!
皆がスキルを用いて戦っている格闘ゲームの中で、持ち前の体術ひとつで無双していくヒロインが実にクール。オフライン時の可愛さとのギャップがたまらん。
ピーキーすぎる戦い方の主人公とのタッグマッチも熱かったです。


VRの人気格闘ゲーム「プラネット」の一撃KOモードでトップランカーとして名を馳せる主人公・鋭一。
彼はある時、一子相伝暗殺拳を受け継ぐ少女・葵と衝撃的な(サービスシーン的な意味で)出会いを果たす!
ゲーム内で避けの名手だからといって、現実世界の暗殺拳を避けて一撃を加えることが果たして可能なのか……というのはツッコんじゃ負けかなと思うのでやめときます(笑)。ほら、培われた動体視力のおかげかもしれないし、ゲームも神経接続っぽいし、まあね?
ゲームへの誘い文句のつもりが告白と受け取られてしまってごく自然にお付き合いが始まっちゃうのも、なんでやねんと思いつつ、葵がチョロすぎて可愛いので許す! 葵さんマジ小動物かわいい。


鋭一に紹介されたゲームの世界。ここでなら思う存分に暗殺拳を振るうことができると、まさに水を得た魚のような葵。
さまざまなスキルを駆使しつつ戦うはずのゲームなのに、逆にやりにくいために自前の暗殺術のみで戦い、それで次々と対戦相手を打ち倒していく葵の格好良さったらない。
格闘描写がかなり良くて、実際の試合をスローモーションで見ているかのようでした。体の動きをきちんと描くことができるのは、バトルものにとって重要な才能だと思います。その点で実に素晴らしかった。
どんどん先へと進んでいく葵。そして彼女につられて、しばらくくすぶっていた鋭一もまた共に高みを目指す。まだまだ上には上がいるけれど、この調子でどんどん快進撃を続けていってもらいたいですね。
もちろん「こいびと」としてのお付き合いの発展にも期待してますよ!


イラストはきただりょうまさん。葵がとにかく可愛い! そしてエロい!
細い体つきなのにふにふに感があるのがとてもよいですな……。


しかしこの子の相手、鋭一じゃなかったら目が100個あっても足りないのでは。

『親しい君との見知らぬ記憶』感想

ストーリー
夢の中で見知らぬ少女と出会い、共に過ごすようになっていた幸成は、ある日、初めて訪れた場所に既視感を覚え、そこで夢の中の少女・優羽子と出会う。そして何と彼女もまた夢で幸成と出会っていたと言う。それから二人はその現象を確かめ合うため、一緒に出かけるようになり、やがて恋に落ちる。しかし全てが順調に思えたある日、突然優羽子が倒れ、意識不明の状態に陥ってしまい……。同じ夢を共有する二人の、ある奇跡を辿る物語――。

現実ではない夢の記憶をなぜか共有する男子と女子が運命的に出会うボーイミーツガール。
不思議な奇跡で出会ったふたりが少しずつ歩んでいく淡い恋模様……を期待していたら、話は思わぬ方向に。
正直読みたかった話とはだいぶ違ったんだけれど、これはこれで。切なさと温かさのあるSF恋愛ストーリーでよかったです。


小学生の頃に学習塾で出会った友達みんなと楽しく遊んでいる記憶。その中のとある女の子と、特に仲がよかった記憶。
おお、まさかの幼馴染ものかな、と思って読んでいたら、なんとこの序章は全部夢の中の話だったという!
実際にはそんな出来事はなかったのに、なぜかとてもリアルに描写される夢。そんな夢を繰り返し見ていた主人公・幸成は、ある時その夢の舞台となった場所で、夢の中身を共有する少女と出会うのです……。
名前まで夢の中のあの子と同じだという彼女・優羽子とともに、「記憶のかけら集め」をすることになるわけですが……なんだこれ、凄くドキドキする!
使い古された表現で言わせてもらうと、もう絵に描いたような「運命の出会い」っていう感じ! かなりクラシカルな出会い方だと思うんですけど、それが逆に新鮮でいいんですわ。久遠先生の瑞々しい描写も相まって、非常に魅力的な出会いの場面でした。


さて、出会って少しずつ仲良くなってきて、そろそろお互いの中に気持ちが芽生えてゆくのかな……? なんてニヤニヤしていたら、フッと時間が飛んで大学生編へ。しかももう付き合っちゃってんのかよ! なんてこった、リア充という人種はこれだからさ……。大学生の恋愛描写って非リア充のハートにやたら突き刺さりますよね。どうでもいいんですけど。
幸せな毎日の中、突然巻き起こる事件。そして次第に解明されるあの夢の謎。
さっきは「運命の出会い」なんて書いたけれど、あの夢、何やらめっちゃ科学的なサムシングだったー! なんじゃそれー!
しかし考えてみればね、世界を越えても同じように出会う男女っていうのはとてもロマンチックだし、愛する人のために奔走する主人公はなんだかんだで格好良かったですよ。何かとやたらデキる奴なんで、無性にムカつくけどね。ただの僻みですね。
ハッピーエンドではありつつも、ちょっぴり切なさも残り、それでいて未来を感じさせてくれるラストが良かったです。


イラストはTivさん。毎度ながら抜群に素敵なイラストでした。
この表紙とか、ほんとたまらんね。


美彌子はいいキャラクターですわ。胸をざわつかせてくれる。

『ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンXIII』感想

ストーリー
ポルミニュエとの結婚が決まり、テトジリチ家とユルグス家の間で起こった悶着に頭を抱えるマシュー。長きにわたった治療が終わり、兵として復帰するハロ。父や兄と共に、新たに心を奪い立たせるトルウェイ。准将という地位に困惑しきりのサザルーフ。独特のやり方でトリスナイ宰相との距離を縮めるヴァッキェ。帝国国民議会を開き、新たな政治を打ち立てようとする女帝シャミーユ。そして、そんな彼ら彼女らを温かく見守りながら、カトヴァーナ帝国を正しい未来へと導くために、いよいよ動き出すイクタ。キオカ共和国との決戦を前にした静かな日々は、まもなく終わりを迎える――。

完結間際の巻にして決戦前の日常回。
完璧な悪に見えた彼にもそれなりの事情があり、また周囲からは無謬たる元帥に見えるであろう彼にもまた弱さがある。
最終巻手前にしてなお、キャラクターを深めていく姿勢に拍手。しかしこれ、本当にあと1冊で終わるのか……?


マシューとポルミの結婚、そしてハロの復帰といっためでたいこと。
三国会議によって得られた技術革新、そしてイクタ主導で行われた爆砲実験といった戦争にまつわること。
ページ数は少なめながら、最終決戦に向けたさまざまなエピソードを詰め込んだ1冊となっています。
それにつけても目立つのはイクタの辣腕ぶり。いつもの怠けはどこへ行ったんだというくらいの働きで、逆に心配になってしまいます。
技術革新だって、これが戦争に用いられることで間違いなく戦いの規模は大きくなるわけで。イクタだけではなく、ジャンにもだんだん思い入れができてきた今、これから待ち受ける決戦のことを思うと憂鬱です。


色んなキャラクターの一面を垣間見ていく中で、なんともはや、ここであの人のエピソードを盛り込んでくるとはね! 一瞬誰だか分からなかったよ!
彼がやったことは到底許せるものではないんだけれど、こういう風にして人生を描かれると、また違った思いが湧き上がるというか。全てに踊らされてきた弱者の悲哀を感じます。人は必ずしも、英雄としてばかり生きていけるわけではないのだ。
サザルーフもなあ。やりきれないよなあ。でも、ここで直接手を下せないから、この人は好きなんですよ。本人としてはね、そんな簡単に片付けられない感情があるのでしょうけれど。
そして最後、イクタとハロのシーンは、これまでのイクタの活躍ぶりとの落差で非常に印象に残る場面となりました。
元帥になっても、イクタはイクタ。守りたいもののため、誰よりも臆病な彼にできることは何か。隣に立つ仲間たちが、少しでも彼の支えになれればいい。
泣いても笑ってもあと1冊。決戦の先にはどんな未来が待ち受けているのか。期待して待つことにしましょう。


サリハ兄様、いいキャラになったもんだ。