まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『クロス・コネクト あるいは垂水夕凪の入れ替わり完全ゲーム攻略』感想

クロス・コネクト あるいは垂水夕凪の入れ替わり完全ゲーム攻略 (MF文庫J)

クロス・コネクト あるいは垂水夕凪の入れ替わり完全ゲーム攻略 (MF文庫J)

ストーリー
陰キャで人間嫌い、だがかつて開催された『伝説の裏ゲーム』を全世界で唯一クリアした少年・垂水夕凪。平凡な高校生になった彼だったが、あるきっかけから「100人の凄腕プレイヤーが『姫』を殺す」新たな裏ゲームに強制的に招待された――『姫』として。しかも本来のゲーム内の『姫』である電脳神姫・春風は、夕凪と身体を入れ替えて現実世界へ。次々とトンデモな出来事を起こし、夕凪の人生を激変させていく。そしてゲーム内の『姫』の死=春風の死だと知った夕凪は、『約束された敗北』を覆すため、一つのミスも許されない究極のゲームクリアに挑む。『入れ替わり』から始まる超本格ゲーム――「俺たちはこれから、このゲームを完膚なきまでに攻略する!」

MF文庫Jライトノベル新人賞<佳作>受賞作品。
VRゲーム内のAIの少女=姫を救うため、彼女の体と入れ替わって攻略不可能なクエストに挑む、知略ゲームアクション。
鬼畜難易度のゲームを、ルールのギリギリを突きながら攻略していく、それ自体ももちろん楽しいのだけれど、何より電子の世界で生まれた少女の命を救うためという熱い目的にグッときました。


強制的に裏ゲームに招待された高校生の夕凪。しかしふと自分を見ると超絶美少女の姿になっていた!
このご時世に美少女との入れ替わりモノですか。しかも入れ替わりの相手は、電子から生まれた人工知能の少女ときたもんだ! いいですねえ。
謎の企業「スフィア」が主催する「裏ゲーム」に挑む見た目は美少女、中身は人間不信の男子高校生、って絵面がもうズルいね。性癖が爆発していて、非常によろしいと思います。
変な美少女プレイヤーが出会った瞬間からベタベタしてきて、触られたり揉まれたりしちゃって、でもこっちの中身は男なんだー! っていうのも、あまりにベタすぎて最高。


入れ替わりということは、当然夕凪の体にはAIの少女が入っちゃっているわけで。
電子の世界で生まれたために、初めて見る「外」の世界に驚いたり怖がったり、だんだん楽しさを見出したりしていく彼女・春風の姿がとても微笑ましく、胸がほっこりしてきます。
直接顔を合わせるのは不可能だから、という理由でノートでの交換日記をするわけですけど、今時交換日記とか! ドキドキしちゃうでしょ! はー、好き。
どんどん春風に愛着が湧いていくにつれ、彼女をこんな窮地に陥れた「スフィア」にむかっ腹が立ってくるし、彼女を救うために頑張りたくなってくるのも当然というものです。
肝心のゲームですが、まあ正直言ってちょっと雑かなーというか、最強の天才が作ったにしてはショボいかな、という印象でした。わりとやりたい放題できた感じだし。個人的には、もう少し緻密に設計されたゲームを誰も思いつかないような方法でひっくり返す、夕凪の天才っぷりが見たかったような気がします。
しかしそこを差し引いても、終盤の熱さは確かなもの。女の子のために戦う男の子ってのは、やっぱりいいもんです。お姫様を華麗に助け出してこその王子様ってもんよ。随分ひねくれ屋の王子様だけどね。
どうやら続刊もあるようで、夕凪と春風のこれからに期待ですね。


イラストはkonomi(きのこのみ)さん。カラーもモノクロも可愛さに溢れていて良かったです。
2枚ほどある見開きイラストが特に印象的で素晴らしい。


春風視点のお話も読んでみたいな。

『ポンコツ勇者の下克上』感想

ポンコツ勇者の下剋上 (MF文庫J)

ポンコツ勇者の下剋上 (MF文庫J)

ストーリー
王立士官学校の卒業を間近に控えたクロウ。ある日彼は、選ばれし勇者にしか扱えない神剣――聖光剣エクスキャリバーの声を聞いてしまう! 声の主である聖光剣の精霊・ホリーが言うには、世界を滅ぼす魔王が復活するため、一刻も早く勇者を探して聖光剣を渡さないといけないらしい。クロウは、剣を勇者に届けるというお手軽なお使いだけで世界を救う立役者になれるならと快諾し、勇者を探す旅に出た。ところが問題児のクロウと、性格がハチャメチャなホリーの2人で旅は前途多難! さらに見つけた勇者は、なんと奴隷の幼女で――!? 一体どうやって連れて帰ろう……? <あの子の主を、私を使ってぶった切れば良いんじゃないですか?>「良くねえよ!」

MF文庫Jライトノベル新人賞<審査員特別賞>受賞作品。
剣の腕もショボければ体力もない、聖剣の声が聞こえるだけの凡人が、周囲から誤解されながらも世界のために勇者を探しだすファンタジーコメディ。
残念な主人公に残念なヒロイン(聖剣)、やらかすことはアホだらけ。でも皆を救うために覚悟を決めた彼らの勇姿は、たとえ神に選ばれていなくても、勇者そのもの。楽しく笑えてラストでは胸を熱くさせてくれる、満足の1冊でした。


勇者に選ばれたわけでもないのに、なぜか「聖光剣エクスキャリバー」の精霊ホリーと会話することができてしまった青年クロウ。
5年後に魔王が復活する前に勇者と聖光剣を引き合わせる必要があるのだけれど、士官学校の中でも最下位の成績を叩き出しているクロウの言うことなど、誰も信じてくれるはずがない! そうだ、盗もう! となる残念っぷりが切ない。
まあクロウはね、多少“クズめ”ではあるけれどまだいいですよ。問題はホリーの方ですよ。口を開けば出てくる毒舌といい、肝心なところで披露してくれるポンコツぶりといい、勇者が携えし聖なる剣とはとても思えない俗物でした。アンタよくこれまで何度も世界救ってこれたね……(汗)。


ホリーに従って出会った勇者は、なんと奴隷の幼女。過去に勇者だった人間は皆男性だったということもあり、余計に周囲の信用を得ることが難しくなってしまいました。
で、こうなる。まあそうなっちゃうよねー。剣を盗んだことは事実だもんねー。それにしたって、もう少し話をちゃんと聞いてくれてもいいんじゃないかとも思いますけど……。クロウの人望のなさは本物だったよ……。
味方はホリーだけ。他には誰一人信じてくれない。でも世界は確実に滅びに近づいていて、それを救えるのは自分しかいない。
そんなとき、凡人たる青年は勇者になる。やっぱり剣が上手いわけじゃないから、ホリーの力でドーピングして、相手の隙をつくような戦い方で、どうにも締まらないけれども、その姿はやっぱり勇者でした。神が選ばなくても僕は信じる。彼もまた勇者だったのだと。
さて、一件落着かと思いきやエピローグでは予想外の展開へ。やだクロウさんったら、モテ期ですか? 魔王復活まであと5年。クロウとホリー、そしてシオンの物語がどう転がってゆくのか、今後の物語も楽しみでなりません。


イラストはぐれーともすさん。肌色! ホリーさん、その鎧全然体を隠せてませんけど!
やっぱりシオンが可愛いです。ロリコンではないです。


ところでカトレア教官ルートは実装されてますか?

『あまのじゃくな氷室さん 好感度100%から始める毒舌女子の落としかた』感想

ストーリー
完全無欠な優等生だが、高圧的で性格はキツく毒舌ばかりの生徒会長・氷室涼葉。そんな彼女に想いを寄せる副会長・田島愛斗は、ある日彼女の言葉の裏に隠された“本当の気持ち”が聞こえるようになっていた! そんな涼葉の本音――それはなんと、あの辛辣でキツい態度や毒舌の何もかもが建前で、本当の彼女は愛斗にべた惚れだったのだ! お互い両想いとわかって喜ぶ愛斗。解答付きの恋愛ならハッピーエンドなんて楽勝だよね!ということでさっそく告白をしたものの……断られちゃった!? MF文庫Jが贈る、答えがわかっているのにすれ違っちゃう捻れ系青春ラブコメ開幕!

MF文庫文庫Jライトノベル新人賞<審査員特別賞>受賞作品。
表向き超ツンドラ少女のデレデレすぎる内心が丸聞こえに! よっしゃー両思いだーと喜んでいたら告白への返事はまさかのNO!
完全両思いなのにヒロインがポンコツすぎて恋が始まらないじれったすぎるラブコメディ、存分に楽しませてもらいました。


恋の神様の力によって、片思い中の女の子・涼葉の本心を聞けるようになってしまった主人公の愛斗。
顔を合わせれば冴え渡る毒舌に冷たい視線をぶちかましてくる涼葉だけれど、本心では愛斗にベタ惚れだった!
ということでめでたく両思い、ふたりは付き合いはじめて幸せに暮らしました……ならよかったのに、本音を頑なに閉ざし続けてきたせいで、愛斗の告白に対して気持ちとは裏腹にお断りの言葉を突きつけてしまう残念すぎる涼葉さんなのでした。いや、これもうあまのじゃくとかいうレベルじゃないだろ……。


ただただ面倒くさいヒロイン・涼葉なんですが、可愛いか可愛くないかでいうとまあやっぱり可愛い。愛斗がポニテ推しを宣言したら分かりやすくポニテにしてきたりするところ、チョロさが極まっていて好きです。
それに、表のツンドラモードはともかく、一喜一憂がハイテンションに過ぎる本心の涼葉を見ていると、微笑ましい気分になってきます。いやまあ、本心がわかるから可愛いだけなんですけどね。これ本心がわかんなかったら本格的に嫌な女だからね。勘違いしないでよね!
愛斗がどれだけ頑張って買い物にこぎつけても、デートに誘おうと思っても、こちらの考えから遥かぶっとんだ方向に失敗してくれやがるのが涼葉さんというヒロイン。こんなんなら、ギャルながら愛斗となんだかんだでいい感じになりつつある砂城さんの方がいいんじゃないの? と思っちゃうんだけれど、それでも愛斗が好きなのは涼葉なんだから仕方ない。恋ってほんと、理屈じゃないワね。
両思いなのに悠長すぎるまったりニヤニヤ恋愛模様、今後の展開も楽しみにしています。


イラストはうなさかさん。表と裏の氷室さん、どちらもそれぞれの魅力があって良かったです。
でもやっぱり僕は砂城のキャラデザが好きかも。最近ギャルヒロイン熱が高まっているんだ……。


ふと冷静になって考えたけど、神社のお賽銭に5万円つぎ込む時点でだいぶ痛いですねこの子。